ヤプリと宣伝会議は2026年3月17日、インターナルコミュニケーション(IC)の推進を検討する研究会「インターナルコミュニケーション研究会」の2026年初回を開催した(通算では8回目の開催)。3年目の初回はICの現在地と今後の方向性を共有した。
ヤプリのオフィス(東京・六本木)にて研究会を開催。
「インターナルコミュニケーション研究会~企業行動に変革を起こし、イキイキとした組織を~」
趣旨
アプリプラットフォーム「UNITE by Yappli」を提供するヤプリと宣伝会議が共同で研究会を2024年4月に発足。従業員一人ひとりが活躍できる状態を生み出すため、経営機能としての広報が果たすべき役割や、風通しの良い企業風土を醸成するインターナルコミュニケーションのあり方等を議論している
3月17日に開催した2026年の初回研究会は、「ICの目的を再構築する」がテーマ。3年目を迎えた研究会の方向性を改めて問い直す場となった。
今回は、継続参加企業に加え新規参加企業も含めた33社が集まり、ICを通じた戦略推進を志向するコミュニティとして、その広がりを一層強めている。参加企業の増加からは、関心の高さだけでなく、ICが経営や組織運営において無視できないテーマになりつつある現状がうかがえる。日本マイクロソフトやNECなどでコーポレートコミュニケーションの責任者を歴任してきた岡部一志氏は、過去2年間に引き続きアドバイザーを務める。
図 参加企業一覧
価値創造プロセスとしてのIC
これまでの研究会では、社内報や動画、アプリなどの施策設計や、エンゲージメント向上のための具体的な取り組みを多く共有してきた。一方で、施策の選択肢が増えるほど、「何のために行うのか」という目的が相対的に曖昧になりやすいという課題も浮かび上がっている。
この点、ヤプリ 執行役員CMOの近藤嘉恒氏は、「施策を重ねているにもかかわらず、手応えが得られないという違和感がある」と指摘する。そのうえで、「ICが単なる情報伝達やイベント運営にとどまっていないか。組織や人の変化にどうつながっているのかを改めて問い直す必要がある」と話す。
多くの企業で、ICは「やるべきこと」として定着しつつある。しかしその一方で、「やっているが効いている実感がない」という状態に陥りやすい。これは施策の問題というよりも、目的と評価軸が曖昧なまま運用されていることに起因する。
今回の研究会では、こうした状況を前提に、ICを「手段」ではなく「価値創出のプロセス」として捉え直す視点を提示。すなわち、「何を変えたいのか」「どのような状態を目指すのか」を起点とした設計だ。
ICの現在地を探る
研究会ではまず、パネルディスカッションを実施。近藤氏をモデレーターに、初参加の良品計画と、3年目参加となるDUNLOP(住友ゴム工業)が登壇し、それぞれの実践と課題を共有した。
パネルディスカッションの様子。
DUNLOPの平野敦嗣氏は、経営トップによるタウンホールミーティングを3 年間で90回実施してきた取り組みを紹介し、「トップのメッセージは理解されていても、『部長や課長は何も変わっていない』という声が上がることがある」と指摘する。
この構造について岡部氏は、「社員が受け手にとどまり、自分ごととして再解釈する機会が不足している」と分析。「特に管理職は、トップの言葉をそのまま伝えるだけではなく、自らの言葉として翻訳し、チームや業務に落とし込めるかが重要」と述べた。
一方、良品計画の阿南理恵氏は、別の角度からICの課題を提示する。「当社では、お客様の方が商品理解が深いケースも多い。つまり、従業員が自社の商品や背景を十分に語れないという知識の差が存在していることがある」と述べ、ブランドと社員の間にあるギャップを指摘した。そのうえで、「新しい仲間が増える中で、従業員自身が自社の製品や店舗に誇りを持てる状態をつくることが重要」と語る。外向けの発信が充実する一方で、それが社員の理解や実感にまで十分に接続されていないという構造は、多くの企業に共通する課題でもある。
この点、「社内外を分けて考える時代ではない」との指摘もある。外向けの発信が社員にも届き、結果として社内に還流する構造が生まれていることから、社員も重要なステークホルダーとして捉え、コミュニケーションを内と外で一体的に設計すべきだろう。
また、ICの本質として「言語化」の重要性も議論した。エンゲージメントや挑戦といった概念は、そのままでは抽象的で受け手によって解釈が分かれる。自社にとってそれがどのような状態を指すのかを定義し直し、共通認識として浸透させることが、行動変容の前提となる。
「I」を主語にする実践
会の後半では、「あなたはICで何を変えたいか」をテーマにグループワークを実施した。特徴的だったのは、組織ではなく「自分(I)」を主語にして考える点だ。
企業活動においては、「会社として何をするか」「部門としてどう動くか」という視点が優先されがちである。しかしその場合、施策は他人ごととして捉えられやすく、当事者意識が生まれにくい。今回のワークでは、「自分は何を変えたいのか」「どのような課題を感じているのか」を言語化することで、ICを改めて自分ごととして捉えることを狙った。
グループワークでは、各社の課題や目指す姿が共有され、ICの役割をめぐる論点が浮かび上がった。主なポイントは以下の通りだ。
● 不祥事や組織変化を背景に、「自社が好きだ」と言えない状態や、社員間の分断といったギャップが顕在化している。
●商品やブランドへの愛着と、会社そのものへの帰属意識の間にズレが生じており、ICを通じたアイデンティティの再構築が求められている。
● ICは単なる情報発信ではなく、現場と経営、部門間の認識をつなぐ「翻訳・接続機能」としての役割が重要になっている。
各社の発表から浮かび上がったのは、個別の施策の巧拙ではなく、「伝えること」と「変わること」の間にある距離である。その距離は、トップと現場、ブランドと社員、部門間や世代間など、さまざまな形で企業内に存在している。ICに求められているのは、それらのギャップを可視化し、接続し直す設計だ。本研究会では、こうした課題に向き合う実践の場として、2026年6月23日に公開セミナーの開催を予定している。
ワークショップと発表セッションの様子。
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