新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。
オーソドックスな構成でも
テクニックを駆使することで
効果的にアピールできる!
近年の健康志向に加えて、昨年来の米不足により雑穀米への注目度が高まっています。そんな中、穀物のリーディングカンパニーであるはくばくが発売した「骨太雑穀」のPRを取り上げたいと思います。
山梨県に拠点を置く同社は、終戦直後から大麦を食べやすく提供することに取り組み、時代とともに取扱品目を増やして大手企業に成長。現在、同社は日本の大麦(精麦)市場においてシェアの6割を占めているそうです。
米に雑穀を混ぜる商品の市場はこの10年間で約2倍に伸びています。ただ、同社製品の愛用者は50~60代が主流で、30~40代の子育て世代にも拡大したい意向がありました。そこで広報は、主食に雑穀を混ぜて栄養を摂取する“ムード”の醸成を中長期戦略に据え、「おこめにプラス」というキャッチフレーズでPRしてきました。
消費者ニーズから商品を開発
しかしここで課題が。同社の商品は大容量袋か使い切りのスティックタイプのみですが、市場調査をすると、雑穀に関心はあるもののスティックタイプでさえ「多い」と感じる消費者の存在が明らかになったのです。そこで「大さじ1杯」を米に混ぜるだけで気軽に雑穀ご飯が楽しめる商品を開発することになりました。
そして生まれたのが、240gと小容量で、摂取量が不足しがちなカルシウムも摂れる「骨太雑穀」でした。最も苦労したのは誰でも抵抗なく食べられる配合で、白米に色が混ざることを嫌う消費者もいることから、さまざまな配合で試作。豆は入れず、色なしの白系雑穀9種類をブレンドする構成にたどり着きました。開発期間は、通常製品の2倍にあたる1年をかけました。
市場戦略本部 市場戦略課 広報担当の手...