グローバルPR市場の注目事例を紐解き、日本の広報担当者が活用できる知見と実践手法を解説します。
2025年、ドナルド・トランプ大統領の再登板とともにアメリカで発動された「相互関税」政策が、国際社会に波紋を広げています。
本稿を執筆している2025年5月現在、特に日本にとって自動車や医療機器、電子部品といった輸出依存度の高い業界への影響は深刻な状況です。経済面にとどまらず、企業が社会にどう語りかけるか─、つまりこのことは広報の在り方にも、静かな揺らぎをもたらしていると考えられます。
日本のみならず、世界中で波紋を広げている相互関税は、日本以外ではどのように受け止められているのでしょうか?また、国外から見た時、日本の広報業界への影響はどのように見られているのでしょうか?
そこで本稿では、国外の広報実務家5人にインタビューし、それぞれの視点から「トランプ関税が企業広報に何を突きつけているのか」、そして「これからの広報に必要なものとは何か」を探りました。
変化に翻弄されるのではなく、意味を与える
「この変化は、私たち広報の領域にとっても他人事ではありません」。そう語るのは、米国JPA Healthのキャリー・ジョーンズ氏です。医療・ライフサイエンス業界のPRを専門とする彼女は、トランプ関税がもたらす現場の混乱を間近で見てきました。
「API(薬の有効成分)の多くを中国に依存しているという“神話”には誤解が含まれますが、研...