ヤプリと宣伝会議は3月17日、インターナルコミュニケーションの推進を検討する研究会の第5回を開催した。大手企業23社の責任者が参加し実践例を共有。社内の関心が高まる、従業員の行動変容につながるコミュニケーションのあり方について議論した。

「インターナルコミュニケーション研究会~企業行動に変革を起こし、イキイキとした組織を~」
趣旨
アプリプラットフォーム「Yappli」を提供するヤプリと宣伝会議が共同で研究会を2024年4月に発足。従業員一人ひとりが活躍できる状態を生み出すため、経営機能としての広報が果たすべき役割や、風通しの良い企業風土を醸成するインターナルコミュニケーションのあり方等を議論している。
「インターナルコミュニケーション研究会」第5回は、イオン、イトーキ、エイチ・ツー・オー リテイリング、エバラ食品工業、大阪ガス、大林組、オリエントコーポレーション、カッパ・クリエイト、コメ兵ホールディングス、JCOM、JTB、島津製作所、商船三井、昭和産業、住友ゴム工業、大和ハウス工業、TBSテレビ、東レ、戸田建設、西日本旅客鉄道、日本特殊陶業、三菱UFJ信託銀行、ヤンマーホールディングスのインターナルコミュニケーション関連部門責任者が集まった(五十音順)。ボードメンバーとしてヤプリが参加。研究会は2部制で、前半は「事例研究」としてイトーキ、JTBの2社が登壇。インターナルコミュニケーション事例を共有した。
イトーキ「工場アンバサダー」
工場を持つ業態の取り組み事例として、オフィス家具メーカーのイトーキは「工場アンバサダー」施策について講演した。製造部門のエンゲージメントスコアが他部門に比べて低かったことを背景に、広報課では、工場勤務の従業員の中からインターナルコミュニケーションをサポートするメンバーを手挙げ制で募集。本社では知り得ない「現場の物語」を発信するのが「工場アンバサダー」だ。社内報へのネタ提供のほか、工場のコミュニケーションを活性化する取り組みを行っている。

イトーキの「工場アンバサダー」は、「現場の広報担当」として工場の魅力を多くの人に知ってもらう活動をボランティアで担う。社内報で活動をレポート。
初年度(2022年度)はアンバサダーが現場における課題を抽出することからスタート。例えば「一緒に働く仲間の顔と名前が一致していない」という課題には「笑顔の写真大作戦!」と題した施策を全工場で実施。アンバサダーが工場の従業員の顔写真を撮影してTeamsで使うアイコンとして設定するというもので、複数工場の対抗戦にし、優勝した工場にはプレゼントを配布するなど、周囲を巻き込んでいった。「指示通り安全に業務を行うことが求められる製造現場の特性から、意見を下から上げる習慣がない」という課題には、普段は言いにくいことも川柳にして発信する「イトーキ川柳」を実施。作品紹介を社内報でしたところ、PV数の高い人気のコンテンツとなった。
2年目は「工場アンバサダー」の活動が、内輪の盛り上がりではなく、会社に貢献していることを理解してもらえるよう尽力。アンバサダーの上長や同僚にもワークショップなどの集会に参加してもらい、共に現場の課題について考える機会を生み出した。さらに3年目では、広報課が伴走することなく、アンバサダー自身が、工場のために何ができるかを考えて活動できるように仕組みを整えていった。
「現場に光を当て、工場内のチャレンジを褒め、社内報でも積極的に紹介することに注力しました。結果、エンゲージメント向上につながったほか、工場と営業部門のつながりが深まり、営業担当者がお客様を連れて工場見学をする機会も増えました」と広報課 課長の近藤愛子氏は振り返った。
JTB「リブランディング」
JTBの事例研究では、リブランディングに伴うインターナルコミュニケーションに関して講演を行った。
コロナ禍で人流が途絶え、旅行業が打撃を受ける中、JTBは2020年、新たな経営ビジョンを打ち出し、2022年には日々の行動において立ち返る原点となる「The JTB Way」を再整備。
BtoB事業をはじめ旅行業以外の事業に対する認知度向上を図りつつ、“交流を創造し挑戦し続ける企業”としてのリブランディングに取り組んでいる。
社内向け施策も段階的に進めてきた。ブランド・マーケティング・広報チームがまず取り組んだのが、「なぜリブランディングが必要なのか」について社内の理解を促し自分の言葉で語れるようにすることだった。
国内外の経営層・支店長を集めたリーダーシップ・ブランド・フォーラムを開催し、ブランディングをテーマにした講演や対談などのコンテンツを用意。この内容が好評だったことから、英訳をつけ、全グループ社員に動画を公開している。社員研修では、ブランディングとは何かという基本項目の解説も行ってきた。
JTBグループの事業領域の広がりや従業員の多様性を表現するため12色のロゴマーク入り名刺を用意したのもリブランディングの一環。従業員は好きな色の名刺を発注でき、名刺を注文すると、The JTB Wayに関連した「問い」と二次元コードが付いたブランドカードも届く仕組みに。「あなたにとって『感動の瞬間』は?」などの問いに対する従業員の回答は、アンケートフォームで集約しイントラネットで紹介している。

JTBでは、名刺を注文すると6種のブランドカードのうち1枚が封入される。カードにはThe JTB Wayに関する問いを掲載。自分の考えを投稿できる仕組みをつくった。
全国の各拠点ではボトムアップ型でThe JTB Wayを推進する「Smile活動」も行う。例えば仙台支店では、同社が目指す「交流創造」を実践すべく、新入社員歓迎ツアーとして、オープントップバスで仙台を巡り、ステークホルダーと対話、交流する企画を実施した。 社内外の共創も始まっている。2024年には、社外から未来の「交流」アイデアを募集し、従業員が審査にかかわるなど、社外活動を社内のモチベーションに結び付ける事例も出てきた。「リブランディングにおいては、理念体系の整備をはじめ、会社が決めていくことが多くありますが、いかに社内を巻き込んでいくかが大事。各支店でリブランディングに取り組んでいる人たちから事例を語ってもらいe-Learningで紹介したところ、良い反響が得られています」とブランド担当部長の荒井寛子氏は話す。毎年の社員意識調査では「ブランドイメージに好感や期待感を持っているか」「ブランドプロミスを自分が体現できているか」などの項目を設け、これらをKPIとしてコミュニケーション施策を組み立てている。
当事者意識をどう醸成するか
研究会の後半では、インターナルコミュニケーションにおいて、従業員の「当事者意識を高めていくこと」をテーマにグループディスカッションを行った。情報の受け取り方は、従業員の世代、所属する部署などによって、温度差が発生するもの。社内全体を巻き込み、行動変容につなげるには、経営層の理解・協力を得ることに加え、段階的なアプローチや、クリエイティブなコミュニケーション施策も必要になっていく。参加者からは、表彰や社内SNSなどの仕掛けを通じ「互いに褒め合う」文化を醸成すること、そして所属部門以外にも興味が広がり会社に対する誇りを持つきっかけをつくることの重要性が指摘された。また、インターナルコミュニケーションの担当者には「経営層と現場のハブ」としての役割が求められていることも共有された。
5月28日参加無料
インターナルコミュニケーション・デイ 2025 Summer
~風通しの良い組織・カルチャーを作り、「自分事化」を促すコミュニケーション戦略~
研究会メンバーらが登壇し、パネルディスカッションや講演を実施。懇親会もご用意しています。インターナルコミュニケーションを担当されている皆様の参加をお待ちしています
日時:5月28日(水)15:00~19:30
会場:ヤプリ内オフィス(東京・六本木)
定員:100名(申込多数の場合は抽選)
申込締切:5月23日(金)9:00
プログラムなど詳細はこちらから

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