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企業価値を高める「情報開示」に関する企画書を書きたい!

  • 片岡英彦氏(東京片岡英彦事務所)

「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。

有事の緊急対応にも役立つ

企業の広報活動における「情報開示」の重要性が高まっている。企業の透明性や社会的責任を示すうえで不可欠であり、ESGやサステナビリティへの取り組みが注目される今、企業活動の信頼を左右する大きなポイントとなっている。ただし、単に資料をそろえて公表するだけでは、投資家や消費者、地域社会など多様なステークホルダーの期待に十分に応えられない。重要となるのは、情報開示を体系的に管理・運用するための「広報企画書」である。

情報開示の目的や対象、発信手段、リスクシナリオなどを整理し、誰が何をいつ行うかを全社的に共有しておくことで、通常時におけるブランド価値向上はもちろん、トラブル発生時にも緊急対応が取りやすくなる。また、ESGやサステナビリティに関する非財務情報を「攻め」の広報と位置付けることは、企業価値の向上にもつながる。情報開示を単なる「義務」ではなく、企業戦略における「攻めの広報」の一環としていくための企画書のつくり方を考えていく。

視点1
企業価値を高める情報開示

透明性と説明責任が求められている

企業の情報開示は、多くの企業にとって広報課題であると同時に重要な経営課題となりつつある。社会の価値観が変化し、環境問題や人権問題などへの関心が高まる中で、企業の透明性と説明責任がこれまで以上に求められている。消費者や投資家は、製品やサービスの品質はもちろん、生産過程やガバナンス体制、さらには温室効果ガス削減やサプライチェーンの透明性、人権の尊重などのESG要素までも注視するようになった。

その上、SNSの普及により、企業の情報は瞬く間に世界中へ拡散される時代でもある。企業は、不祥事や不正が発覚した際の対応方針をあらかじめ定め、危機管理広報のマニュアルを作成して、社内外への発信プロセスを明確にしておく必要がある。情報開示の重要性は高まる一方、その戦略が企業の競争力を左右する要素にもなり得るのだ。

情報開示のメリット・デメリット

積極的な情報開示には、ステークホルダーとの信頼関係を強化するメリットがある。投資家に対しては経営方針や中長期ビジョンを示すことで企業価値の再評価を促せるほか、消費者には製品の安全性や社会貢献をPRでき、従業員のモチベーション向上にもつながる。

一方で、開示の方法やタイミングを誤れば、企業の評判を大きく損なう可能性がある。このため、情報開示の管理体制を整えることが必要不可欠となる。広報企画書は、情報開示を含む企業のコミュニケーション活動全体を俯瞰する設計図としての役割を持つ。

企業はリスク管理だけでなく、自社の強みや社会貢献をアピールする「攻めの広報戦略」として情報開示を活用できる。環境負荷削減などを効果的に伝え、「社会から必要とされる企業」としての地位を確立することで、優れた人材の獲得も狙える。ESGやサステナビリティへの取り組みを示しながら、クライシス発生時には迅速かつ誠実な対応を行うことが、企業価値の向上につながる。

図1 情報開示が企業価値を高めるカギ

●企業の透明性と社会的責任が重視され、ESGへの注目が急上昇

●SNSの普及により、不祥事の拡散や批判リスクが拡大

●攻めの広報(積極的な情報開示)でブランド価値向上を狙う

●情報開示を体系的に管理するための「広報企画書」が重要

視点2
広報企画書の役割と盛り込むべき要素

リスク管理、ブランド強化の戦略の一環

情報開示を体系的に管理・運用するための広報企画書を、広報部門が主導して作成するにあたっては、経営層や法務、IR、製造、人事など他部門にも事前にヒアリングなどを行った上で、各部門からの情報や視点を統合していく。企画書には、ステークホルダーごとのメッセージ内容や発信のタイミング、担当者の役割などを明文化し、リスク管理やブランディングに関わる企業のコミュニケーション戦略の一部として位置付ける。

情報開示が不適切な場合、企業イメージは一瞬にして毀損されかねない。特にクライシス発生時の初動の遅れは厳しい批判を招く要因となる。広報企画書に潜在的なリスクやクライシス対応のシナリオを組み込むことで、部署間の連携などが明確になり的確な行動が可能となる。企画書の作成過程において、各部門のデータや課題を集約し、目的や優先度、発信手段を調整することで、実行段階での情報やメッセージの不足を防ぐことができる。私の経験上でも、こうした企画書の制作過程において、事前に社内コンセンサス形成を行ったことで、クライシス発生時の混乱が最小限に抑えられることがあった。

さらに積極的な情報開示を行うことで、企業の透明性の高さや社会課題への真伨な取り組みが評価され、ブランド価値の向上につながりやすい。一貫性のあるコミュニケーションの実現により、例えば、サステナビリティを重視する企業であれば、環境負荷低減などの具体的な取り組みを数値やエピソードとともに発信することで、企業独自のストーリーを構築できる。

図2 情報開示に関する広報企画書の役割

●企業の情報開示を体系的に管理し、透明性と一貫性を確保

●クライシス発生時の迅速な対応を可能にし、企業の信頼を守る

●ステークホルダーごとに適切なメッセージを整理し、企業価値の向上を図る

●社内の意思決定プロセスを円滑にし、情報開示の精度を高める

●法令や市場環境の変化に対応し、広報戦略を柔軟にアップデート

情報開示の「目的」と「指標」を明確に

広報企画書に盛り込むべき要素として、まず情報開示の「目的」を明確に定めることが大切だ。…

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