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製造工場で起きた爆発事故 向き合わざるを得ない現実〈後編〉

公開日:2025年3月27日

    【あらすじ】

    宇都宮にあるトーミョー食品の工場で起きた爆発火災の対応に追われる総務部課長の森川遼。社内では途中から情報が錯綜し、平時につくられたマニュアルは現実と乖離していた。爆発から4時間以上が経った頃、本社から製造部と広報部の担当者が到着。広報担当者の的確な言動に、森川の意識も変化していく。

    危機は全員で乗り越えていく

    公表できる情報には限りがある。爆発現場を直接確認できない今、状況を正確に把握することは極めて難しい。それでもメディアからは容赦なく問い合わせの電話がかかってきた。

    自然災害や今回のような事故が起きたとき、メディア対応は“基本的に本社とともに対応する”とマニュアルには書かれているが、目の前の現実との乖離は明らかだった。

    「栃木県宇都宮市にある食品メーカーのトーミョー食品宇都宮工場で、今日の朝8時すぎに爆発が発生しました。現在、消防による消火活動が行われており、付近一帯は封鎖されています。この爆発で工場の従業員3人が意識不明のまま病院に搬送されています」

    負傷者は2人と聞いていたがテレビでは3人と伝えられていた。至急確認しなければならない。「負傷した従業員の人数を至急確認してください!」総務部課長の森川遼が事務所の奥まで響くほどの声を出す。「製造二部課長の福岡真吾とライン主任の喜多啓一と……ちょっと待ってください。対策本部に確認します!」製造部の課長が応じる。

    工場長の京極雅也をはじめとした工場幹部が詰めている対策本部から新しい情報は入っていなかった。「喜多さんと福岡さんの自宅住所、分りますか?」森川の問いに製造部長が怪伬な表情を見せる。「分かるが、なぜだ?」「メディアの記者が取材に行くかもしれません」製造部長の顔が歪む。

    「福岡の奥さんと子どもはもう病院に駆けつけた。喜多は実家のご両親に連絡済みだ」病院には製造部の社員が1人付き添っていたはずだ。「病院に同行した社員に『万が一、記者が来ても工場総務の森川がすべて対応するから応じなくていい』と伝えてください。それから、病院にもう1人派遣してください。医師と警察への対応だけでも大変なのに、そこにもしメディアが行ってしまったらとても1人では対応できません」森川の説明に京極が頷く。

    「それと、テレビでは負傷者3人と伝えられていましたが、1人増えたんですか?」森川が製造部長に確認する。「3人になった」“共有してくれよ、情報持ってたって対応しないくせに……”「いつ情報が変わったんですか?」…

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