楽しみながら企業ブランドやモノづくりの裏側を知ってもらえる「工場見学」や「体験施設」。自社の技術力や社会的活動を、幅広いステークホルダーに伝えるにはどのようなプログラムが好評なのか、話を聞いた。
SPOT 01
「食」から「器」に興味を持ってもらう
▶︎ 光洋陶器 | KOYO BASE(岐阜県・土岐市)
レストランやホテルなどプロフェッショナル向けの食器をメインに製造販売している光洋陶器。一般ユーザーとコミュニケーションを図る場として2023年1月、工場、ショップ、カフェを併設した体験施設を設立した。来館者のメインは20~30代。カフェでは「陶器のお重に入ったカレー」「形状の異なるカップ3種のコーヒー飲み比べ」などのメニューを用意。食を入口に器へと関心を持った人たちに、ワークショップや工場見学へと足を運んでもらう流れをつくった。工場見学はガラスなどの仕切りは設けず、人の技と機械の融合をよりリアルに感じられる設計に。
工場見学

ワークショップ

絵付けや型押しを体験できるオリジナル食器づくりのワークショップも開催。自社製品を導入しているコーヒーショップのバリスタによるイベントも予定している。
カフェ


「陶器のお重」「形状ごとに異なった飲み口を感じられるカップ」などの自社製品を食事とともに提供。
DATA
食卓からさかのぼり、土から生まれる食器までのつながりを感じられる複合体験施設。コンセプトは「Clay to Table(土から食卓までを)」。工場見学では「素材に触れてもらう」「クイズ形式で答えてもらう」など、ただの製造過程の説明に終わらない工夫も。正しい知識を学ぶことよりも、見学者が楽しむことを目的とし、工場見学を入り口にモノづくりや産地への興味を持ってもらうことを目指す。

来館者の平均滞在時間:60分~180分
施設の運用SNS:Twitter、Instagram
ノベルティ:焙煎の深さを食器の焼成の温度(800度と1300度)で表現したコーヒードリップバック「ブレンド800」「ブレンド1300」。
SPOT 02
歴史展示と工場を一体化 変遷とモノづくりの現場が同時に分かる
▶︎ マルナオ | オープンファクトリー(新潟県・三条市)
箸を中心に木製カトラリーやステーショナリーなども展開するマルナオ。オープンファクトリーでは、職人たちが箸をつくる様子をガラス越しに見学できる。右側に製造工場、左側にギャラリーといった構造が特徴。ギャラリーには昔の製品が展示され、同社の歴史を感じながら現在の箸づくりを学ぶことができる。工場を一般に開いたことによって、海外からもバイヤーが来るようになったという。
ギャラリー・工場見学

ショップ

ショップでは、同社の箸の「優しい口当たり」が分かるよう先端を上に向けて展示。展示方法にこだわることで、ショップも「ギャラリー」として機能する。
DATA
商品を買った後にもマルナオとつながれる場所として開設した。連休の際には鉋(かんな)を使用した箸づくり体験も実施しており、「子どもの食育につながった」といった声も。また、「モノ作りの街 燕三条」を担う次世代への発信のため、小学生の見学の受け入れや、施設内でのスタンプラリーも行っている。

ターゲット:同社製品の利用者
来館者の平均滞在時間:45分
校外学習の受け入れ:有
SPOT 03
見られる前提の工場設計で13万人動員
▶︎ 能作(のうさく) | オープンファクトリー(富山県・高岡市)
鋳物メーカー能作は本社移転の際に、職人の手仕事を間近で見られるよう工場内に見学通路を整備。また、「炉」「銅」といった作業工程を示す真鍮の標識も設置し、「見せる」ことを前提とした工場設計を行っている。工場見学は毎日5回行われ、年間動員数は13万人以上。夏休み限定の小学生向け工場見学・鋳物製作体験セット特別プランは...