新疆ウイグル自治区の問題に対し、当初の会見では「ノーコメント」と話し批判を浴びたユニクロの柳井氏。持続可能性を標榜していただけに、そのイメージ悪化は必至だ。しかし、アパレル業界ならではの障害もあろう。その理由を本稿著者が語る。
問題の経緯
2021年1月

写真は2020年、米国南サンフランシスコベイエリアモールのユニクロ店のもの。
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ユニクロを展開するファーストリテイリングは2021年1月、米国に綿シャツの輸入が差し止められた問題。対象となったのは、同ブランドの男性用の綿のシャツ。理由は、「中国・新疆ウイグル自治区での強制労働により生産された疑いがある」としている。一方、ユニクロは「強制労働などの問題がないことが確認されたコットンのみを使用している」と反論する一方、2021年4月の会見では、同社の柳井正会長兼社長は「ノーコメントだ」と述べた。
メディアはどう見た?
● ユニクロ・柳井氏がウイグル発言で失うものは何か。「ノーコメント」が悪手だった3つの理由
(ハフポスト、2021年4月10日)
● ウイグル問題 綿花「ノーコメント」柳井氏“取引先問題ない”
(NHK、2021年4月8日)
生活者からの声
● 政治的中立発言により、最高責任者が重大な問題から逃げたと思う
(57歳男性)
● 中国の人権弾圧に世界各国が注目する中でこの会社の社長が発したコメントは、日本企業のイメージを傷つけた
(29歳男性)
● 人権問題を無視する企業だと思った
(65歳女性)
● 問題のあるコットンは使っていないという弁明。ユニクロでは購入することをやめた
(56歳女性)
日本のアパレル産業のサプライチェーンは非常に複雑で、全体像が掴みにくいといわれている。その歴史的理由と必然性を説明する。ファッション商品というのは「はやり、すたり」があり、今年はこれが流行るが来年は何が流行るか分からないという事情がある。衣料品を「工業製品」として分類すれば、「布帛(織物生地)」「ニット」「カットソー」の3つに別れ、つくり方から生産機材、工場から産地まで異なっているため、トレンドの不確実性に対応するため自社工場を持つことはファッション企業にとってリスクだった。
その結果、ファッション製品の生産を商社に委託・外注化することが一般的だった。従って、アパレル企業は製造委託をしている商社のさらに上流工程で何が起きているのか正確に把握している企業は極めて少ない構造ができあがったのである。
加えて、1990年、DCブームといって、アパレル商品が、今の市場規模より30%も...