2020年も誹謗中傷や炎上は後を絶たず、SNSの発展で「炎上」はより身近なものとなっている。炎上は人が起こすもの。そのメカニズムを知ることは最良の対策となる。企業の広報担当者が毅然、冷静な態度で対応できるよう、ポイントを聞いた。
近年、SNSの発展で、業種業態を問わず多くの企業にとって「炎上対策」は重要課題となりました。バイトテロやバカッター対策は最重要課題。SNS上の巡回パトロールはもちろん、炎上による風評被害対策のための保険に加入されている企業もおられるでしょう。
炎上は「人間」が起こすもの
「おのれ、SNSめ……」という広報担当者の声が聞こえてきますが、それは認識が間違っています。炎上とは「ある出来事をきっかけに、非難や批判が殺到して事態の収集が付かなくなる状況」を指すネットスラング(俗語)です。しかし、そもそも「誰かの不用意な発言」で炎上のような状況に陥るケースは、随分と昔からリアルでも起こっていました。
SNSのシェア(拡散)機能が炎上を拡散しやすい手段であるから「SNS=炎上」と思い込んでいるだけです。SNSが炎上を起こすのではなく、SNSを使っている人間が炎上を起こすのです。炎上自体は「人間の業」みたいなもので、恐らくはこの先も無くなりはしないでしょう。
つまり炎上対策の本質は、「人間」に目を向けることなのです。なぜ人は炎上を起こすのか、そのメカニズムが分かれば、企業側は何をすれば良いかが自然とつかめます。
2つの「認知の歪み」
人が炎上を起こすメカニズムとして、筆者は2つの「認知の歪み」に注目しています(図表1)。
出所/筆者作成
ひとつ目は、自分の発言なんて他人は全く気付かないだろうと考える「マジックミラー錯覚」です。「自分からは他人が何をしていようと見えていないのだから、同じように他人にも自分が何をしているか見えていないだろう」と誤解してしまうのです。バイトテロもバカッターも「こんな悪ふざけ、ネット上に投稿したところで誰も見ていないだろう」と錯覚し、まさか炎上するなどとは夢にも思わずに投稿しているのです。
「マジックミラー錯覚」による炎上は誰でもが起こす可能性がありますし、SNSだけが舞台とは限りません。つい最近も、知性も教養も兼ね備えているべき大学教授が有名歌手に対して不適切な書き込みを行いました(のちに本人は謝罪)。
他にも、政治家は会場に向けたリップサービスのつもりで口が滑り(「復興以上に大事なのは議員」「すぐ忖度する」など)、芸能人もラジオでリスナーに向けた下ネタが...