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災害リスク 広報が備えておくべきこと

災害取材・防災のプロが提言 「企業は平時から情報公開を」

  • 中川和之(時事通信社 解説委員・内閣府「TEAM防災ジャパン」アドバイザー)

企業は「被災者」「二次災害の加害者」「デマの被害者」など様々な立場になりうる。記者として約30年にわたり災害取材を重ね、防災研究にも取り組む中川和之氏が、災害発生時の広報の動きと、平時から取り組むべき「備え」について解説する。

人類は、地球の営みでもたらされた多様な資源を活かして暮らしてきました。企業も同じように活動をしてきました。

日本列島は、4つのプレートがひしめき合い、地球の活動が非常に盛んな変動帯にあります。海洋に囲まれた中緯度地域の列島は、水や植物が豊富で、海洋にも養分がもたらされ、海にも陸にも生き物が暮らしやすい環境があります。地震や火山の活動は、貴重な鉱物資源を産み出しました。歴史以前から、人々はこれらの恵みを活かして暮らしてきました。大陸の砂漠地帯では、そうはいきません。

しかし変動帯ゆえに、地震や火山噴火、洪水、土砂崩れなどが頻発し、人間社会は災害に遭い続けてきました。でも、自然の恩恵の方が大きく、この列島に人々は暮らし続けてきました。この地に人の暮らしがなければ、企業に必要な人材という資源も、マーケットもありません。

そんな相手と企業はどう付き合えばいいのか、企業広報は何を発信していけば良いのでしょうか。広報として対外的な情報を発信するうえで、自然災害はすべての企業に無関係ではないこと。そして、自然現象からの一方的な「被害者」という立場は取りえないということも、最初に押さえておいていただきたいことです。

    災害時、企業にとってのリスクとは?

    自社、自社の社員が被災する

    周囲への加害現象を起こしてしまう

    サプライヤーが被災し、間接的な影響を受ける

    デマ、風評被害

基本的には通常業務の延長

そもそも、企業広報は、誰に、何のために情報を発信するのでしょうか。消費者や顧客などの取引先に対する情報発信や、上場企業であれば株主に対する広報も必須です。

サプライチェーンの関係者に対しても自社の状況を伝えることは大切なこと。事業所のあるそれぞれの地域に対しても、企業活動が伝わっていることが求められます。自社がビジネスの対象としているエリア全域に対してのブランド発信も役割でしょう。一方で、地元自治体や政府関係機関などに、個別の許認可事項だけでなく、企業活動が伝わっていることは大切なこと。これらは、すべて企業広報の役割です。

自然災害を想定したときに企業広報に期待される役割は、基本的にはこれらの通常業務の延長です。過度にマスコミ取材を恐れることはないと私は考えます。

企業広報は、企業の中と外とをつなぐ役割です。社会を理解しないまま、内側の視点だけで発信した失敗は、私より皆さんの方が詳しいでしょう。企業の外側の社会が何を求めているか、アンテナを高くして把握し、自社の状況を踏まえてうまく社内にフィードバックしつつ、対外的に情報発信をするのが企業広報の役割。だとすると、自然災害を前提に皆さんの企業と、そのステークホルダーが、平時から自然災害とどう向き合い、どう備えているかを把握していなければならないわけです。でも、それは日常の他の広報業務と同じですよね。

二次被害やデマも想定して

具体的な現象に対して、災害発生時だけでなく、日ごろから企業広報の担当者としてできることも含めて考えてみましょう …

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災害リスク 広報が備えておくべきこと

東日本大震災から8年が経つ2019年。「3.11」の後も各地で、地震や豪雨といった災害が相次いでいます。緊急対応や復興支援はもちろん、時には風評被害など企業側が予想しえない事態に見舞われることも。企業はいつ何時起こるか分からない災害にいかに備え、ステークホルダーや社会に適切な情報を届けるべきか。専門家の提言や、実際に災害対応に直面した企業の例をもとに考えます。