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予期せぬ「炎上」を避けるために スタートアップ企業の広報・法務戦略

公開日:2018年2月20日

  • 鈴木悠介(西村あさひ法律事務所)

近年増えている、スタートアップ企業の事業活動をめぐる"炎上"問題。ここでは、企業不祥事を扱う弁護士がベンチャーの成長段階別の炎上パターン、これらを回避するために必要な広報・法務戦略についてアドバイスする。

スタートアップ企業(→用語解説1)とは、一般的に、新しいビジネスモデルの開拓を通じて急速な成長を遂げている、または遂げようとしている企業のことを指します。スタートアップ企業と呼ばれる企業に共通するのは、既存のビジネスの改良ではなく、「何らかのイノベーションを伴う新規事業の立ち上げ」という要素です。

こうした企業は、①新規事業の立ち上げ期 ②事業の急成長期 ③成熟期(スタートアップ企業からの脱却)という段階を経て成熟していくことが多く、それぞれの段階において陥りやすい"炎上"の類型と留意すべきポイントがあります。

私自身も企業の不祥事を扱う弁護士として、こうしたケースを扱う場面が少なくありません。今回は炎上といった問題を避けるための広報・法務戦略について取り上げます。

リスクの見極めを疎かにしない

①新規事業の立ち上げ期

スタートアップ企業としては、大企業が既に進出している分野に後発で参入しても勝ち目が乏しいことから、既存企業が手つかずの分野で新規事業を立ち上げることになりがちです。

もっともこうした分野は、既存企業としては「ビジネスチャンスの存在を認識してはいるものの、現行のルールが存在しないがゆえにリスクの質・量を見極めにくい」「新規事業が現行のルールと抵触するリスクがある」といった理由から、参入を見送っているケースも多いように思われます。

このような既存企業としては引き受けにくいリスクを引き受けるところに、スタートアップ企業としての強みがあり、勝ち目も出てくるわけです。ただ、やみくもにリスクを引き受けるのでは駄目で、その前提として「リスクの見極め作業」が重要となります。ここを見誤って、新規事業の立ち上げ直後から、その適法性について、関係当局やメディアから疑義を呈されるなどして"炎上"し、出鼻をくじかれるケースは少なくありません。

こうした初期の段階で"炎上"してしまったケースを見てみると、目の前のビジネスチャンスがもたらす利益の大きさ、そして「他社に先駆けてリスクを取らないとビジネスチャンスを逃してしまう」という焦燥感などから、このリスクの見極め作業を疎かにしてしまっている場合が多くあるように見受けられます。

「新規事業が関連法規やガイドラインなどと抵触しないかどうかを確認することは当たり前だろう、そんなことを疎かにする企業があるのか?」と疑問に思われるかもしれません。ただ実際には、皆さんが思っている以上に、世の中には様々な法規やガイドラインなどが多数存在しており、思わぬ形で抵触して問題となることが多いのです。

確かに、新規ビジネスを主導するチーム内で誰かが危険フラグを察知しさえすれば、法務部門や弁護士など然るべき相手への相談がなされます。ところが実際には危険フラグすら立たず、是正のチャンスが与えられない場合も少なくありません。

こうした事態を避けるためには、新規事業の検討を開始した当初の段階から、早めに法務部門や弁護士を巻き込んでおくことが重要です。事前に相談しておけば、事業者が安心して新規事業を進められるような制度を活用することもできます。例えば、産業競争力強化法に基づくグレーゾーン解消制度(→用語解説2)や企業実証特例制度(→用語解説3)などです。

ブレーキではなく「戦略的法務」

新規事業の立ち上げを成功させているスタートアップ企業の中には、創業メンバーが過去に別の企業において不祥事を経験するなどして、こうしたリスクの見極め作業の重要性を痛感しているというケースがあります。だからこそ、そこに多くの人的、金銭的、時間的コストを、惜しむことなく投じることになるのです。

個人的な印象ですが、世間からチャレンジングな社風として知られる会社の方が、実際に内側から見ると、リスクの見極め作業を担う法務部門などに多くのリソースを割いている傾向があるように思います。

こうした会社は、法務部門は会社の"ブレーキ役"という考え方から脱却し、さらに一歩進んで"戦略的法務"の重要性、すなわち法務部門がどれだけ戦略的に振る舞えるかこそが新規事業の成否を決することを理解しているように感じます。

ロビー活動における注意点

また、これから始めようとする新規事業が既存のルールに抵触する場合には、既存のルールを自社に有利な方向で変更してもらうよう働きかけることも考えられます。ロビイングやルールメイキングと呼ばれる活動ですが、こうした活動は一歩やり方を間違えると、企業が自社の利益の追求のために既存のルールを"ねじ曲げようとしている"などとして、世間からの批判を招きかねません …

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