システムリニューアルに伴いログインIDのパスワードを再設定ください。

システムリニューアルに伴いログインIDのパスワードを再設定ください。

メディアが注目の「糖質オフ」 くら寿司の斬新メニューでサプライズPR

  • 井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

今、食品業界で最注目ワードのひとつが「糖質オフ」です。中でも業界の人たちの間で話題なのが、くらコーポレーションが展開する「くら寿司」の糖質オフシリーズ。以前から、回転寿司なのにラーメン、カレーを出すなど大胆なメニュー開発をしてきた同社ですが、この糖質オフも(1)シャリの代わりに大根の酢漬けを使う「シャリ野菜」(2)麺の代わりに蒸し野菜を使う「7種の魚介らーめん 麺抜き」(3)シャリを従来の半分にした「シャリプチ」という斬新なラインアップでした。

このプロジェクトが始まったのは2015年。当初は来店客の「サラダなども食べたい」という野菜を求める声に応え、焼き野菜をシャリにのせた寿司を試験販売しました。ところが「よく調べると、野菜をネタに使用した寿司はすでにたくさん存在していて、くら寿司らしいオリジナリティが乏しいと断念しました」と広報宣伝部東日本担当マネージャーの辻 明宏さんは明かします。

「シャリにメスを入れなければ」と考えた結果、酢飯を別のものに替えることに。よく豆腐やこんにゃくが使われたりしますが、食感や食べ応えなど需要を加味して食材を検討した結果、「大根の酢漬け」が最適という結論になりました。もともと刺身にはツマがついており、魚介と親和性があったことも決め手のひとつ。従来の酢飯に使っていた合わせ酢をそのまま使うのではなく、ゆず胡椒を用いるなど大根に最も合う味つけを研究し、決定していきました。

他方で、「ダイエット中の消費者が回転寿司でシャリを残している」というニュースを社員が目に留めたのをきっかけに「シャリプチ」の開発も進んでいました。その間に世の中では「糖質オフ」への注目度が高まり、くら寿司でも糖質オフを企画の中心に据えることに。ラインアップの充実を図るため「らーめん 麺抜き」も加え、「糖質オフシリーズ」として、2017年8月末に販売を開始しました。

意外性が反響を呼ぶ鍵に

記者発表を行った8月29日は、あいにく北朝鮮のミサイル発射と重なってしまい、「ニュースがそれでもちきりになるのでは」と心配したそうです。取材に来たNHKの記者にも「ニュースで使うかどうか分からない」と言われたようですが、実際には『おはよう日本』などで紹介されるという結果に。TBSのニュースやYahoo!ニュースに出たこともあり、直後から大きな反響がありました。

私は「ご飯がつきものの寿司で糖質制限」という意外性やギャップが鍵だったと思います。辻さんは「メディアにはもともと『糖質オフ』を扱いたい潜在的な欲求があり、適当な素材がなかったところに当社がちょうど参入しました。当社を入り口に『糖質オフ』の特集を組むメディアが多いです」と分析しています。糖質オフをきっかけに改めてくら寿司に注目し、企業自体を特集するメディアも出てくるなど、波及効果もありました。

消費者の反応もよく、10日間で100万食と社内予想の倍以上の出足を記録。「ダイエットをしているので、いつも私だけ家族と違うメニューを食べていたけど、今日は一緒にお寿司を食べられました。ありがとう」といったお礼のメールも届いているそうです。

現場で培ったテクニックを活用

リリースを見ていきましょう。まず(ポイント1)タイトルは、メディアが注目するワードのオンパレード。「糖質制限」という"トレンド"に「回転寿司チェーン初」という"初モノ"。8月31日の「野菜の日」もメディアが好む"記念日"で、私の知る範囲でもあやかろうとした企業は多数ありましたが、くら寿司のひとり勝ちでした。

当初は9月1日発売の予定でしたが、広報が「野菜の日に合わせた方がいい」と提案し、1日早めた甲斐があったようです。寿司なのに「シャリ抜き」には"サプライズ"があります。しかもそれを「"さび抜き"の次は"シャリ抜き!?"」と、疑問形で面白みのある表現にしていて社風を感じさせます。

本文はその疑問に答える形になっています。(ポイント2)タイトルが疑問形なので、つい答えの本文まで読みたくなるという戦略が成功しています。

(ポイント3)各メニューの左側に表示された、「△%オフ」という丸いアイコンも効果的です。単に数字や文章で示すと読み飛ばされてしまうところも、アイコンだとつい目が引き寄せられます。メニュー表や広告などで培われたテクニックが、リリースにも活用されているのでしょう ...

この記事の続きを読むには定期購読にご登録ください

月額

1,000

円で約

3,000

記事が読み放題!