2016年3月、日本交通は東京・紀尾井町(千代田区)に新オフィスを構えた。近年は「テクノロジーとの融合」を掲げIT部門の強化を進めており、旧来からある「タクシー会社」のイメージを覆す空間が広がっている。

エントランスから見えるのは、日本交通のシンボルとも言えるタクシーの車体。ビルの利用者がこの車体を見て、タクシー乗り場と勘違いすることもあるそうだ。
「ITテクノロジー×タクシー」をアピールするエントランス

エントランスでは川鍋一朗会長や社員が出演した動画「恋するフォーチュンクッキー」や会社説明ムービーが流れる

正面のタクシー車体に目がいくように、社名ロゴや案内板などは壁沿いにレイアウト。47都道府県3万2000台の提携タクシーを呼ぶことができるアプリ「全国タクシー」は巨大画面のモニターで表示

都内で4台しか走っていないという桜色の行灯。車番の「1928」は日本交通の創業年だ

「千代田」は本社の所在地だが、実際にはこの区に登録されている同社のタクシーは存在せず、この展示用タクシーのためだけに作成された

実際のタクシーに搭載する最新の機材を積むことで、シミュレーションやショールームのような使い方も

オフィスに実車があることでメディアの撮影にも対応しやすい
日本交通が無線センターから営業所、そして修理工場までを1カ所に集約していた浮間(東京・北)から、現在の紀尾井町(同・千代田)に本社を移したのは2016年3月のこと。
同社はスマートフォン対応など競合との差別化を目指し、IT部門の強化を図っている。2011年に提供を開始したアプリ「全国タクシー」のようなソフトウェアから、従来は他社から購入していた無線配車システムやドライブレコーダーなどハード面まで自社開発にこだわってきた。
「移転には、IT部門の拡張によって社員数が増え、フロアが手狭になったという背景があります。また優秀なエンジニアの採用を強化していくうえでも、本社機能は都心に移した方が良いだろうという判断がありました」と広報担当の小山泰生氏は話す。
2015年6月に移転プロジェクトが始動し、まず本社に集約する部門を選定。管理部、営業部などの本社機能のほか、ITエンジニア部門や無線センター、そして新卒採用部門の約240人が働いている。プロジェクトメンバーでもある総務担当の柬理亮氏は「無線センターを本社に置くことで、お客さまや乗務員との間に日々起きている課題をエンジニアが把握できるようにしました」と話す。
タクシー会社であることを象徴する空間づくりにもこだわった。営業所がない紀尾井町でも会社の原点を振り返れるようにと、フロア内にタクシーの実車を配置。この実車はエンジニアの試作にも活用され、最新の設備の寸法チェックや試験も行われる。これらのシステムは将来的に他のタクシー会社にも販売することを目指しており、ショールームとしての役割も果たしているという。
「実車があることで、メディアの撮影も営業所を介すことなく実現できます」と小山氏。競合ひしめく業界の中で、オフィスそのものが変革へ挑む姿勢を発信する場となっている。
「オープン」な姿勢表す無駄の少ない執務エリア

エントランスの棚には近年授与された賞状や記念トロフィーなどが並べられている

ビルの共用廊下には、日本交通の歴史にまつわる資料を展示

共用部から見える棚の裏側はホワイトボード。ちょっとした打ち合わせなどで使われている

無線センターには1日に約1万件もの配車依頼などがあるという。奥の窓から天気が確認でき、雨が降りそうなときは問い合わせの増加を推測できる
遊び心と実用性を備えた社内共用部にも注目

自由なレイアウトが特徴のカフェスペース。打ち合わせはもちろん、ここで作業をする社員もいる


会議室にはタクシーが盛んに走る3つの都市の名前をつけている

それぞれ部屋の内部にはイメージカラーもあり、「ロンドン」の場合は黒を基調としたデザイン

社名 | 日本交通 |
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オフィス使用開始 | 2016年3月 |
場所 | 東京都千代田区 |
社員数 | 約240人 |