企業のコミュニケーション戦略に、優れたコンテンツとストーリーが重要となってきた。その上で、効果を最大限に高めるためには、広報主導のビジュアル活用が不可欠だ。
CHECK SHEET
広報主導のビジュアル活用
STEP1 コミュニケーションの主体とターゲットを明確にする
▢ 広報の役割に照らしてビジュアルを捉える
▢ 現場ではなく、企業のメッセージを伝えるビジュアルを選ぶ
▢ 情報発信のチャネルによってビジュアルの方向性も変える
STEP2 常にブランドアイデンティティを意識する
▢ ブランドアイデンティティがなければ、そこからまず考える
▢ ビジュアルの中にブランドカラーを盛り込む
▢ インナーコミュニケーションでもビジュアルの意義は同じ
STEP3 ストーリーを凝縮した写真・動画を使う
▢ 要素の多い写真、長い動画は避ける
▢ モバイルファーストで考える
▢ あえて隙のあるビジュアルを発信し、ときにリミックスも意識する
▢ 必要に応じてストックメディアも賢く利用する
すでに世界の常識といって良いPRにおけるビジュアル活用
1日あたり数億時間。読者の皆さんは、この数字を何だと思われるだろうか?これは、YouTubeの統計による、同サービスの動画ののべ視聴時間である。これほど大量の動画がオンラインで消費される時代が来ることを誰が予想しただろうか。
このように私たちは、家でも会社でも、あるいはモバイル状態でも常にビジュアルコンテンツに囲まれた状態で毎日を過ごしている。視聴者は、時間を持て余した若者だけではない。フォーブス誌が全米の大企業の上級エグゼクティブ300人を対象に行った調査によれば、2010年の時点ですでにその52%が週に1度以上は仕事に関係するビデオをYouTube上で視聴すると答えている。YouTube以外のサービスも含めれば75%に達していた。
企業のPR活動にとって、優れたコンテンツとストーリーを用意することは基本中の基本だが、それを最も効率よくターゲット層に届け、エンゲージメントを深めるには、ビジュアルを活用したクリエイティブが不可欠となる。ここでは、成功する企業がこだわり続ける「写真」と「動画」の使い方のノウハウと留意すべきチェックポイントをステップ別に触れていこう。
STEP1
コミュニケーションの主体とターゲットを明確にする
自社に関連する情報を発信して拡散し、社会や消費者と良い関係を築こうとする企業のPR活動には、当たり前だが、コミュニケーションを行う主体と、それを届けるターゲットの見極めが必要だ。ところが、テキストによるプレスリリースではそれができていても、こと写真や動画となると、効果の薄い、あるいは最悪の場合には逆効果となる使い方をしてしまう企業がある。
これを防ぐためには、次のようなポイントを確認することが求められる。
▢ 広報の役割に照らしてビジュアルを捉える
日本では、マーケティングとPR、宣伝の境界が曖昧になっているが、そもそもマーケティングとは、新たな需要を掘り起こして顧客を獲得するための活動や戦略を指す。
これに対してPRは、自社に関する情報を広く社会に知ってもらうことで市場における認知度を向上させる仕事であり、社内報などを通じて社員の間に会社全体の方向性や動きを伝え、理念を共有して事業を推進させる役割も担う。
対外的なPRのメッセージは主に報道メディアやソーシャルメディア、オウンドメディアを通じて発信され、特に報道メディアでは掲載されれば信頼性の高い情報として消費者に認知されやすいものの、その裁量権はメディア側にあり、内容も自由に編集される可能性がある。
宣伝もPRと似てはいるが、情報発信のための「枠」をそれなりの対価を払ってメディアから購入し、企業側が伝えたいことをそのまま伝えることができる点が大きく異なる。
こうした違いを考慮すると、報道メディアに取り上げられたり、ソーシャルメディアで拡散してもらったりする上で、実はPRにこそ、情報を的確に …