「コミュニケーション量とは発信した情報量ではなく、お客さまの理解を得た量」─。IBMの経営企画・マーケティング・広報担当役員を経て、デルのトップに就任した平手智行氏。経営における理想的なコミュニケーションモデルを提言する、平手社長の「広報観」とは。

デル 代表取締役社長 平手智行氏(ひらて・ともゆき)
1987年日本IBM入社。アジア・パシフィック地区経営企画、米IBM本社の戦略部門を経て2006年執行役員兼米IBM本社バイスプレジデント。通信・メディア・公益事業担当を経て、2010年経営企画・マーケティング・広報担当。2012年米ベライゾン エリアバイスプレジデント兼ベライゾンジャパン執行役員社長を経て、2015年8月から米デルバイスプレジデント兼デル代表取締役社長に就任。
広報と経営戦略の一体化へ
─広報出身のトップとして、広報の仕事の重要性をどのように捉えていますか。
IBM時代はマーケティング・広報に加えて経営企画部門も管掌しており、企業メッセージに一貫性を持たせて明確にして、社員やお客さまに伝えることを何よりも重視していましたね。広報はノンペイドのコミュニケーションですから、自社が提供する価値、そして企業文化としてそのメッセージを発信し、お客さまに理解していただく。その土台があってこそ、ペイドの領域であるマーケティング活動も一貫して実践できます。つまり「広報と経営戦略の一体化」が、ひとつのポイントでした。
「広報は社長そのもの」というのも、当時の経験から学んだことです。お客さまが自社をどのように見ているか、社長の分身としてしっかり見聞きし、口を開いて発言する。まさに社長の目であり、耳であり、口なのです。企業のコミュニケーション量は、発信した情報量ではなく、「お客さまの理解を得た量」であると考えています。
─企業の広報活動は多岐にわたりますが、特に重視している領域は。
最も重要であるのが、危機管理と報道対応です。次に、CSR活動を含む文化・社会への貢献による会社のイメージ形成。この2つの軸が土台となり、その上に事業戦略があるピラミッドのようなイメージを常に描いています(図1)。この3つの要素と、順番は崩しません。いくら事業戦略に力を入れても …