広報・PRに力を入れている中小の製造業はまだまだ多くはないからこそ、アイデアさえあれば同業他社と大きく差別化できるチャンスが広がっている。広報の視点を取り入れ、課題解決につながった企業の成功例からヒントを探りたい。

狼の写真が印象的なウェブサイトでは、ブランドの持つ理念や概念を説明している。
「圧倒的」な存在になりたい!
中小製造業がブランディングに成功した理由
JMC (3Dプリンター出力事業 ほか)
「この国のものづくりを置き去りにする」─。どきりとするようなブランドメッセージを掲げる中小企業がある。鋳造品製造や3Dプリンターを用いた試作品の製作を手がけるJMC(横浜・港北区)だ。3Dプリンターの製造現場は「365日稼働」を軸とし、「見積もりは必ず1時間以内に返答」「金曜日の注文で月曜日には納品」といった、従来のものづくり企業の概念を覆すビジネスモデルを築き、注目を集めている。高い品質とスピーディーさを売りにした高付加価値戦略で、競合よりもやや高価ながら注文が相次ぐ。
日本における3Dプリンター事業の先駆者ともいえる同社だが、以前は社の強みや魅力が社内で認識されず、ステークホルダーにも十分に伝えられていなかった。そこで、昨年から広報やブランディングに注力し、ステークホルダーとのコミュニケーション強化や社内活性化につなげている。
取締役として同社のブランディングを担当し、自身でもデザイン事務所を運営する山崎晴太郎さんはこう断言する。「ものづくり企業は、事業を一般の人にも分かるように伝えるという、当たり前のコミュニケーションをしてこなかった。今までは、それでも売上を上げることができたが、今やこうしたコミュニケーションの力がないことで受注量が減り、廃業に追い込まれる企業も多い。技術の高さを一般に伝わるように『翻訳』する術を持てば、大きく躍進することができる」。ビジネスモデルだけでなく …