企業のブランド管理と密接に関わる、ソーシャルリスニング。専門家であるホットリンク・内山幸樹氏が広報部とともに語ります。

カンロ 経営企画室 課長代理 林麻衣子氏(中央)/木村恵子氏(右)
「ポジ・ネガ問わず、重要な発言は見逃さずにモニタリングしていきたい」と林さんと木村さん。
経営層もモニタリング結果を注視
内山:御社は2012年に創業100周年を迎えられた菓子業界の老舗メーカーですが、SNSでの情報発信を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
林:初めてSNSのアカウントを作成したのは、企業のソーシャルメディア活用が注目され始めた2011年ごろです。「ピュレグミ」をはじめ、ブランド別にTwitterアカウントを立ち上げました。それから約2年後に、私たちが属する経営企画室も管轄に加わる形で、コーポレート全体のアカウントとしてFacebookも開設しています。
内山:ソーシャルリスニングに力を入れ始めたのはいつごろからですか。
林:2年ほど前から専用ツールを入れて、リスク対策の観点からTwitterでの発言などをモニタリングするようになりました。
内山:リスク対策は特に最近、注目されていますが、御社では当社のモニタリングツール「e-mining(イーマイニング)」を長く使っていただいていますよね。ありがとうございます(笑)。
林:そうですね。食品業界では以前から様々な問題が起きていたので、危機意識を持っていました。担当の木村を中心に、随時、ウォッチしておくべきキーワードを登録して、モニタリング内容をチェックするようにしています。
内山:木村さんがチェックする頻度はどのくらいですか。
木村:毎日2~3時間おきにSNS上の動きをチェックしています。リスクの芽は早めに摘みたいので、モバイル機能を使って土日や出先でも確認できるようにしています。
林:つい最近も、カンロの製品があるスマートフォン向けゲームとコラボレーションすることになり、販売開始日に当社のECサイトにアクセスが集中しサーバーダウンしてしまったことがありました。そういった取り組み自体が初めてで、初日にどの程度サイトにアクセスが集中するのかを予測できなかったのが大きな原因です。商品を購入できない状況が発生し、お客さまにご迷惑をおかけしてしまいました。
内山:製品やサービスの瑕疵ではなく、人気やアクセスが集中したがゆえのリスク、というのも実は起きうることなんですよね。その後の対応はどのようにされたのでしょうか。
林:結果的に、SNSのモニタリングを習慣化していたのが功を奏しました。すぐに事態に気づき、現場にいた者の判断でSNS上に謝罪文などを公開したのですが、商品を楽しみにしてくださっていたお客さまの間でカンロへのネガティブな発言もあり、SNSで起きうるリスクを再認識しました。
内山:やはり想定していなかったところから問題が発生してしまうのが、ネットリスクの怖いところです。その出来事から学んだ教訓はありますか。
林:SNS上で発生したリスクに、いかにスピード感を持って対応できるかということです。今回の件を踏まえて、有事の情報の伝達ルートを確保するためのフローを整理してマニュアル化し、共有するようになりました。
木村:モニタリングは経営企画室のメンバーを中心に行ってきましたが、複数の社員が見られるようにしたのも、変化のひとつです。改めて経営層をはじめ関係部署と対策の重要性を認識する機会にもなりましたし、今では情報共有徹底のために、社長や役員もモニタリング状況を閲覧できるようにアカウントを共有しています。
内山:社長までも!ネットリスクは全社での情報共有のスピードが命で、その重要性について社内の理解を得られたのは大きな出来事ですよね。その点に悩まれる企業の方は非常に多いです。
林:そうですね。新たな顧客との接点を開拓していくためにも、今後はSNSのリスクも認識しながら、「攻め」のソーシャルメディア活用に挑戦していきたいです。
![]() |
聞き手/ホットリンク 代表取締役社長 内山幸樹氏(うちやま・こうき)東京大学大学院在学中に日本最初期の検索エンジンの開発プロジェクトに参画。博士課程在学中に検索エンジンベンチャー創業に関わる。2000年6月ホットリンク設立。2013年12月東証マザーズ上場。 |