アマゾン・グーグル・スタバ・アップルも標的、欧米の倫理的消費者運動とは?

公開日:2014年10月08日

企業のリスクが拡大している。冷凍食品への農薬混入、悪ふざけ写真のインターネットへの掲載といった「社内テロ」をはじめ、悪評を受けるレピュテーショナル・リスクなども活発だ。これらのリスクは企業業績を直撃し、最悪の場合、市場からの撤退=倒産を招く。あらためて、リスクにどう向き合うかを考察する。

拡大するレピテーショナル・リスク

  • 2013年4月にバングラデシュで起こったラナ・プラザ倒壊事故は、そこで働く人々の最低賃金が月37米ドルという搾取的な労働を強いられていたことを世に知らしめた。ロンドンのオックスフォード・ストリートに店舗を構える有名なファストファッション企業は、ラナ・プラザで製造された商品を仕入れていたため、全欧州からの批判にさらされた。


  • 英国では現保守党政権が財政改革を進める中で、50万人近くに及ぶ公務員削減方針を打ち出し、これに「UK Uncut」という公務員支援団体が即座に反応した。新たな税収源を示し、政府に公務員解雇を考え直させる戦術をとったのだ。具体的には、英国内でビジネスをしているにもかかわらず、巧みな税務エンジニアリングによって法人税を納付しない超一流企業を名指しで告発し、公務員を削減する前にそれら企業に税金を納付させよと迫った。


  • この戦術は消費者による不買運動に発展し、経営者が英国議会に喚問される事態に至った。やり玉に挙がったのはアマゾン、グーグル、スターバックス、アップルといった有名企業である。英国内で多くの雇用を創出しているという自負を持っており、このような「倫理的消費者運動」は予想もしなかったに違いない。


  • 倫理的消費者の目的は、不買運動による業績の悪化を期待するよりも、むしろ企業のレピュテーション(評判)に傷をつけることにある。騒ぎが一般消費者まで広がると、政治家や著名人にも賛同者が現れ、企業側が頭を低くして嵐が通り過ぎるのを待つということだけではすまなくなってくる。トップ交代や記者会見での陳謝といった日本的対応では解決できない。
  • (2014年5月27日付フジサンケイビジネスアイ 山本・ティレル・由美氏が寄稿した記事より)

    仕入れただけで批判の的に

    欧米で、アクティヴィスト(物言う投資家)グループによる「倫理的消費者運動」が市場に強い力を持つようになってきた。例えば、途上国や新興国にある多国籍企業の生産・調達拠点において、搾取的な労働条件で働かせていたり、環境汚染や環境破壊を引き起こしたりしているような商品を物理的な行動を伴ってボイコットする。レピテーショナル・リスク(悪評を受けるリスク)が拡大しており、企業は思いもよらないことで足元をすくわれる可能性がある。

    太平洋技術監理有限責任事業組合の首席エコノミストで、英ロンドン在住の山本・ティレル・由美氏が2014年5月27日付のフジサンケイビジネスアイに寄稿したレピテーショナル・リスク関連の記事が広報関係者の間で話題を集めている。日本ではほとんど報道されていない欧州の倫理的消費者運動の実態を紹介したからだ。

    この記事によると、バングラデシュで搾取的な労働が発覚し、そこから ...

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