
来場者との交流を大切にする同施設。「お兄さんに会いたい」と1カ月に4回訪れる子どもも。
三重県伊賀市の農業交流施設「モクモク手づくりファーム」。年間50万人という動員数をキープし続け、1988年の開業から売上も右肩上がり。地産地消の成功例として、全国の自治体や農場からの視察が絶えない。ポイントは、口コミを誘発させる工夫の積み重ねだ。
女性の口コミを促す工夫
「広報予算はもともとありません。すべて口コミを促すシチュエーションづくりで成り立っています」と話すのは、入社20年目、広報担当歴18年目の浜辺佳子氏。開業当初からイメージ戦略を重視し、口コミ誘発を中心とした施策を推し進めてきた。
口コミを促す中で軸となるのが、女性の心を掴むということ。最初に女性の口コミ力を実感したのは、近隣に住むお母さん向けに始めたウインナー教室だ。初めは小さな集まりとして始めた教室だったが、お母さん同士のコミュニティの中で徐々に口コミが広まっていき、最終的には自らバスをチャーターしてバス単位での予約が入るようになった。同社が旅行会社と一緒にパッケージプランを作らずとも、顧客同士がプランして予約が入る。「ほとんどが女性からの支持で成り立っています。あまり広く知られていない、というところもママ心をくすぐるものがあるのだと思います。お中元の季節になると、お母さん同士で顧客リストを作って、一括注文が入ることも。女性の口コミ力のすごさを目の当たりにしてきました」。
広告宣伝をしない、ということも、口コミを促すポイントのひとつ。人の心理として、「派手に広告宣伝しているところは、口コミしたいと思わないはず」と話す。「全国区のブランドづくりを目指すよりも、地域ブランドとして保つ方が長い目で見て生き残れると考えています。大きなコミュニティを狙っていくよりも、小さなコミュニティの支持者を増やす方が大切。それが口コミを促し、人を引き寄せる軸になっているのだと思います」。