

昨年、フランス・ベルサイユ宮殿で開催されたドンペリニヨンのパーティで、フランスを代表するシェフ、ジャン・フランソワ・ピエージュ氏に採用されたカネコ小兵の陶器皿。パーティの様子は各国の有名雑誌を飾った。写真は『Pen』(阪急コミュニケーションズ)での掲載。
知見や予算がなくても、アイデアひとつでできるのが広報活動。そうは言っても労力に見合う効果が得られるのか、という声も聞かれるかもしれない。夫婦で行った記者発表をきっかけに、大きく可能性が広がった例を紹介する。
自社ブランドを広めたい
岐阜県の田舎から、パリのメゾンブランドに進出――。広告宣伝費はもちろんゼロ、最初は広報活動の存在すら知らなかったが、「自分たちの商品を売りたい!」その一心で、夢のようなシンデレラストーリーを実現させた会社がある。
「思えば、記者クラブの中央テーブルを借りて、妻と2人で震えながら行った、小さな記者発表が全ての発端です」そう話すのは、"美濃焼"の窯元・岐阜県土岐市のカネコ小兵製陶所社長伊藤克紀氏。OEMの受注製造を主とし、かつては日本一の徳利メーカーとして知られていた同社だが、飲酒習慣の多様化から熱燗離れが進み、ここ10年間で出荷本数が98%ダウン。「このままの形ではやっていけない」とそれまでのOEMからの脱却を図り、自社ブランドの構築を目指して立ち上がったのが10年ほど前のことだ。
しかし、良いものができてもそれがなかなか世に広まらない。どうしたら世の中に広まって、商品に動きが出るのか―― そのための手法が分からず、もがき苦しむ日々が続いた。