
採用期間の短縮化で企業も学生も不安に(写真はマスメディアン主催のセミナーの模様)
経団連の倫理憲章による採用活動期間の短期化の影響を受けるのは学生も同じだ。早期に企業や業界の情報を得たいと考える学生は、インターンシップの門戸を叩く。インターネット業界を中心にその傾向について聞いた。
採用短縮化は学生も不安
採用選考早期化に歯止めをかける目的で定められた経団連の倫理憲章を受け、採用広報(会社説明会など)の解禁の後ろ倒しと就職活動期間の短期化が進んでいる。経団連はその理由に「学生への配慮」を掲げるが、学生にとってそれは必ずしも有難いわけではなさそうだ。
会社説明会などオープンな場で就職に関する情報を得る機会が短くなることで、学生個々の「就活力」がより試されることになる。積極的な学生はOB訪問を重ねたり、社会人との接触機会を増やしていく。
「マスナビ」の名称で新卒学生のマスコミ・広告・ウェブ業界向けの就職サポートを行っているマスメディアンは、主に大学3年生向けのセミナーを年間180回程度実施している。内容は若手社員や内定者の講演からクリエイターやマーケターの仕事紹介、業界展望に至るまでさまざま。「志望業界を絞り込んだ学生は早期から情報収集に意欲的。他の学生より一歩リードしていると感じます」とマスメディアンの西尾将紀・マスナビ事業部部長は話す。
インターンシップもその延長線上にある。マスナビのセミナーを受講した学生のアンケートからも、「就業体験を得て志望のイメージをふくらませたい」といった動機で手を挙げるケースが多いという。企業の人事としても、早めに学生に会って意識や感触をつかみたいとする声が挙がっている。
IT、特にインターネット関連は大学生に人気の高い業界のひとつ。成長企業が多く人材採用意欲が高いほか、組織が比較的フラットで若手にチャンスが回ってくる可能性が高いことも学生にとっては魅力だ。こうした業界の取り組みを見てみよう。
学生をシリコンバレーに招待
インターンシップに積極的なのは、サイバーエージェントやグリーなど新卒を数百人規模で採用する大手が中心だ。通常は大学3年生の夏休みに実施する。6月~7月に申し込みを受け付け、人気のコースはインターン参加にも厳しい選考がある。期間は5日間程度が多いが、1日で終わるものも。内容は企業によってさまざまで、社員とともに新規営業に汗をかくようなものから、自社商品開発に携わるもの、企業が用意した研修プログラムに参加するものまでさまざま。
例えばサイバーエージェントは、スマートフォンアプリ開発を行う8日間のコースのほか、ソーシャルゲームデザイン、ビジネスなどのコースに細かく分かれている。ビジネスコースでは、優秀な学生にシリコンバレーへのツアーに招待すると掲げている。このほか、ディー・エヌ・エーやグリーは参加した学生に報酬を支払うという。
企業にとってインターンを行うメリットは何か。「まずは会っておくのが重要と考えている企業が多い」と西尾氏は指摘する。デジタルマーケティングの領域に関心のある学生はSNS上の友人の多さなど周囲への影響力のある人が多く含まれ、ポジティブな評判形成につながるとの期待もある。
就職・転職支援のディスコが実施した2014年3月卒業の採用活動についてのアンケート(13年5月実施)によると、今年度インターンシップを行うとした企業は前年比3ポイント増の30.9%。1000人以上の企業では47.3%で7ポイント近く増えた。今年度の受け入れ数は、「増やす」とした企業は22.4%で、「減らす」(3.1%)を大きく上回り、企業の実施意欲は高まっていることがわかる。実際のところ、インターンシップの実施が採用の成功に結びつくかは未知数だが、学生との接触機会を持ちたいと考える企業は多そうだ。