トランプ大統領の再選をきっかけに、「パリ協定」からの再離脱、気候関連規制の緩和など、米国の脱炭素・サステナビリティ推進への機運は弱まっているように感じられる。一方、サステナビリティや脱炭素を推進する必要性は高まっており、世界情勢とのジレンマが発生しているとも言える。そんな中、日本企業はどのような影響を受けるのか。みずほリサーチ&テクノロジーズサステナビリティコンサルティング第1部の永井祐介氏が予測する。
2025年1月にトランプ政権が誕生して以降、「パリ協定」からの再離脱や化石燃料増産への支援強化、気候変動政策の一部撤回など、米国の政策は大幅に変更されました。
こうした変化を捉えて、脱炭素の世界的な動きが止まるのではないか、これから「“脱”脱炭素」に向かうのではないかと疑問を持たれる方もいると思います。しかし、そんなに単純ではありません。トランプ政権誕生により変わるもの、変わらないものについて、世界と日本への影響を中心に考えてみます。
気候変動交渉の歴史から世界への影響を考える
まず、米国の「パリ協定」再離脱が脱炭素の世界的な動きに与える影響はどのようなものでしょうか。ここでは「パリ協定」と「離脱」の歴史を振り返ります。
大前提として、気候変動を防ぐには、世界全体の温室効果ガスの排出量を減らすことが必要です。そのため、世界は1992年に「国連気候変動枠組条約」、1997年に「京都議定書」に合意し、先進国から温室効果...