「販促コンペ」はマーケティング上の効果を見込める斬新なアイデアを審査・表彰する公募賞だ。2023年に実施した第15回「販促コンペ」では、「このあと、カラオケ行こーすたー」という企画が、エクシングの課題でシルバー・協賛企業賞を受賞。2024年9月に実際の施策として実現も果たした。本記事では、エクシングの寺西初氏、加藤千絵氏、企画者の山本啓太氏、槻舘翼氏に実現までの道のりを聞いた。
目指したのは社会人の自分ごと化
──エクシングが、第15回「販促コンペ」に協賛した理由を改めて教えてください。
寺西:エクシングは通信カラオケ「JOYSOUND」を主軸とする会社です。社外の方が考えた実現可能性が高いアイデアを見られるという点に魅力を感じて、「販促コンペ」で課題を出すことを決めました。社内会議では似たようなアイデアばかりになることも多く、コロナ禍でカラオケから足が遠のいてしまった方々にどのようなアプローチを行っていくべきか悩んでいたところでした。特に社会人の方は、飲み会の二次会などでカラオケに行く機会が減少しています。そういった人たちに、再び「カラオケボックスに行きたい」と思ってもらえるようなアイデアを募集しました。
──今回実現した「このあと、カラオケ行こーすたー」。受賞した2人は、どのようにしてこの企画を考えたのでしょうか。
山本:まず企画するにあたって一番大事にしたのは、自分自身が社会人になってカラオケに行った時の記憶。社会人の皆さんにもカラオケの思い出はあるはずです。その時の気持ちを思い出してもらうきっかけとして「コースター」を使うというコアアイデアを思い付いたのは、応募締切の1カ月前でした。カラオケという親しみやすい題材のため、応募アイデアの母数も多くなると思っていたので、ほかのアイデアと差別化を図るためにも、時間をかけて企画をブラッシュアップしていきました。
槻舘:コースターのビジュアルで意識したことの一つに色使いがあります。色を多く使うことによって華やかで楽しい雰囲気を演出することができるのですが、その一方で子どもっぽい印象になることもあります。今回は社会人の皆さんへ向けた企画なので、「子どもっぽくなってしまうのは避けたい」と思っていました。そのため、「このあと、カラオケ行こーすたー」のロゴとコースターで使う色を、「JOYSOUND」カラーの赤と白、黒の3色でまとめることにしました。

このあと、カラオケ行こーすたーとは?
エクシングの課題「歌うもよし、歌わぬもよし。社会人がカラオケボックスに行きたくなるアイデア」でW受賞を果たした作品。表面に社会人のあるあるシチュエーションを、裏面にそれにぴったりな歌詞と曲名を記載したコースターで、カラオケに足を運ぶきっかけづくりを目指した。
ほぼ満場一致で協賛企業賞に
──次に、企画が実現するまでの流れについて教えてください。
寺西:「販促コンペ」はエクシング全社をあげたプロジェクトと考えていたので、賞を選ぶ際には開発、宣伝、企画運営などいろいろな部門が参加していました。そんな中で、ほぼ満場一致に近いかたちで協賛企業賞に選定したのが「このあと、カラオケ行こーすたー」の企画です。シンプルでありながら私たちには到底思い付かないアイデアで、実現可能性が高いのもポイントでした。
加藤:実は社内では、「販促コンペ」贈賞式が終わった後、企画の実現に向けて動き出そうと検討を進めていました。本企画はコースターに掲載する曲名や歌詞ありきのアイデアなので、そこの権利面をどうクリアするかライツ部門と相談し、実現のめどがついたタイミングで、山本さんと槻舘さんにお声がけさせていただきました。
山本:エクシングさんと企画についてのキックオフミーティングを行ったのが2024年6月ごろ。連絡があった当日は、うれしさと興奮で眠れなかったのを覚えています(笑)。実現にあたって一番注力したのは、掲載する楽曲の練り直しです。ランキング上位で歌われている曲をシチュエーションと一緒に数十曲提案し、エクシングさんと相談して、現在の4曲に絞っていきました。社会人がターゲットということもあり、最終的には90年代の楽曲を選びました。
寺西:近年の90年代リバイバルブームもありますし、やはりカラオケとして90年代の楽曲は根強い人気があります。最近の歌はトレンドの移り変わりが早い上に、好みが細分化されていてカラオケで多く歌われる曲というのは意外と少ない。コースターの裏面を見た時に「ああ、この曲か!」とみんなに思ってもらえるような、インパクトのある印象的な歌詞を抜粋するお2人のセンスにも驚きました。
槻舘:90年代という曲の方向性も決まって、山本さんから「ロゴも昔のバラエティ番組のようなイメージに寄せたほうがよいのでは」と提案がありました。昔の番組タイトルのフォントやあしらいなどを参考にロゴをブラッシュアップ。カラオケに関する企画だということが伝わるように、マイクのモチーフを目立たせています。
加藤:コースターを置いていない飲食店も増えている中で、どこで企画を実施するかも検討を重ねました。当社の子会社であるスタンダードが運営している飲食店で、下に「JOY SOUND直営店」がある店舗で実施することで、コースターを見てすぐにカラオケに行ける動線をつくった点もポイントです。
──企画を実施してみての反響や今後の展望についてお聞かせください。
寺西:まず、この素晴らしいアイデアをかたちにすることができたことが、担当者としてとても嬉しいです。コースターを設置した飲食店のスタッフからも、「おもしろい」「懐かしい」と話題にしてくださるお客さまが多いと聞いています。
加藤:実際にコースター経由でカラオケを利用する人の約8割が社会人だったり、大人数でカラオケを楽しむ社会人の方がいたりと、狙い通りの結果が出ています。カラオケの魅力を改めて思い出してもらえるような企画を、これからも実施していきたいです。
山本:企画が実現して、周りから反応をたくさんもらいましたし、設置店舗に槻舘さんと2人で行って自分のアイデアがかたちになった喜びを噛み締めました。今後も自分の好きなことを活かして企画をつくっていければと思います。
