ルクア大阪などの商業施設を運営するJR西日本SC開発には、トキメキ事業部という名の部署がある。生活者の悩みを受け止め、新しいサービスを企画している。
ため息を受け止める
──トキメキ事業部とは、どのような部署なのでしょうか。
北野:トキメキ事業部は、2020年8月に立ち上がった部署です。もともとは「トキメキデパート」という名称でInstagramアカウントを運用していたことが始まりです。
商業施設のSNSは発信することが多く、キャンペーンなどについて投稿しがちです。ですが、発信ではなく、気持ちを受け止めるような“受信メディア”になりたいと思って始めました。
大垣:女の子がどんなことに悩んで、喜んでいるのか。その気持ちを受け止めて代弁するようなInstagram運用をしています。ストーリーズでいろいろな女の子とコミュニケーションをしてお悩み、ふぅっ⋯⋯と出てしまうため息を聞いています。
例えば、その中で出てきた「大人になってあまりほめられなくなった」という悩みにすごく共感して、ひたすらほめてくれる「ほめるBar」というイベントを実施しました。
北野:そういった企画を継続的に行っていきたいと、トキメキ事業部を立ち上げました。説明しなくても刺さる情報を“トキメキ”と呼び、左脳ではなく右脳、頭ではなく心に響く企画を行っています。
部署としては、この2人でやっています。Instagramやサイトなどで悩みを集めて、トキメキ事業部が企画を考え、クリエイターや出店企業の方と協業して実施するなど形は様々です。
──なぜ立ち上げたのでしょうか。
北野:お客さんとコミュニケーションをとることに、今の商業施設では限界があると感じたことが背景としてあります。どういった気持ちで買われているのかを理解できずにいました。
大垣:女の子たちがモノを買うきっかけは多くあります。ワンピースを買うのにも、大好きなインフルエンサーが着ていた、店頭のマネキンがかわいいから、気になる人との初デートで買ったなど。さらに、その心理について考えるとより深くなります。自分が着るときを考えると、心をゆったりさせたいときに着ます。インフルエンサーがきっかけという人も、心理としては自分に自信がなくてかわいくなりたくて真似をしたい、ということかも。
私の祖母が同窓会に行き、その時の写真を見ると、みんなが花柄のワンピース着ていました。母が郷ひろみのコンサートに行くときは、真っ赤な口紅にきらきらのアイシャドウ。彼女たちはコンサート、同窓会に行くのではなく、あのころの自分を取り戻したくてオシャレしているんだなと感じました。
そういったことから、彼女たちは買い物でいろいろな気持ちの隙間を埋めているのではないかと考えたんです。
北野:ルクアでは、そういった気持ちに寄り添える...