サッカーJ2リーグの大宮アルディージャは、スタジアムのデジタルインフラ整備やコンテンツ拡充に早期から注力してきた。その蓄積が、コロナ禍でのファンとの交流にも生かされている。
- 運営:エヌ・ティ・ティ・スポーツコミュニティ(NTTスポーツコミュニティ)
- 設立:1998年(前身のチームは1969年創設)
- ホームタウン:埼玉県さいたま市
- メインアリーナ:NACK5スタジアム大宮(さいたま市大宮公園サッカー場)
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TEAM HISTORY
「スマートスタジアム化」を推進
1969年、「電電埼玉サッカーチーム」として創設。その後「電電関東サッカーチーム」に改称し、1985年からは「NTT関東サッカー部」として活動。1997年には、のちになでしこJAPANの監督としてワールドカップ優勝を果たした佐々木則夫氏が監督を務めた。
1998年から、Jリーグへの参加が承認されたことを機に「大宮アルディージャ」に改称した。2004年にJ2リーグで2位となり、J1昇格を果たした。2017年に2度目のJ2降格を経験し、現在は再びJ1昇格を目指しリーグ戦に臨んでいる。
クラブ名「アルディージャ」は、ホームタウンである旧大宮市(現さいたま市)のマスコット的存在である「リス」のスペイン語を語源とする。
2016年から「スマートスタジアム構想」を掲げ、ホームのNACK5スタジアム大宮にWi-Fiアクセスポイントをくまなく設置。スタジアム内でアクセスできるスマートフォンサイトでは限定動画の配信のほか、地元商店街と連携して飲食店などの情報を提供している。こうしたICT活用の取り組みは、運営会社と主要株主であるNTTグループが共同で進めている。
埼玉県さいたま市をホームタウンとする「大宮アルディージャ」(運営会社:エヌ・ティ・ティ・スポーツコミュニティ)の特徴は、「地域とのつながりを重視し“アットホーム感”を大事にしていること」と話すのは、デジタルマーケティンググループ課長の小島陽介氏。市内には「浦和レッドダイヤモンズ(浦和レッズ)」もホームを置く。Jリーグ屈指のビッグクラブの存在も、アットホーム感を重視してきたアルディージャらしさを形づくってきたといえそうだ。その特色はコロナ禍でとった方策にも表れていた。

本拠地のNACK5スタジアム大宮でサポーターに応える選手たち。

アットホーム感を大切にしているクラブだ。



スタジアム内のWi-Fiネットワークの敷設、デジタル会員証やオリジナルコンテンツなどの「スマートスタジアム化」を推進してきた。
©N.O.ARDIJA
サポーターの本音を聞く
所属するJ2リーグは2月23日に開幕したのち、新型コロナの感染拡大を受け全試合の延期が決定。再開は6月下旬にずれ込んだ。自粛期間中はアルディージャも他の多くのクラブと同様に「ステイホーム企画」を実施。オリジナルのイラストや背景画像、選手の自宅での様子などを紹介しながら、クラブへの興味関心、サポーターとの関係維持を目指した。
課題となったのは開幕前から販売していたシーズンチケットやファンクラブ会員の扱いだ。経験したことのない出来事。小島氏は「正直どうしていいのか分からなかった」と振り返る。それなら聞くしかないと考え、5月にシーズンチケット保有者を対象にオンラインアンケートを実施した。
発表したシーズンチケットの扱いは、利用継続、払い戻し、払戻金の寄付など複数の選択肢がある。利用継続の場合も、無観客試合や制限付き試合で観戦できない分は1試合単位で払い戻すなど、アンケートで寄せられたサポーターの声を最大限反映した。特徴的なのは、アンケートの集計結果も公式サイトで公開したことだ。
結論のみを発表する形にしなかったのは、「共創」への意識もあった。応援の機会を奪われたサポーターの不安に寄り添うには、丁寧なコミュニケーションが重要だと考えた。小島氏は...