日本国内での競馬の開催を主管する日本中央競馬会(JRA)は、2017年から20歳代~30歳代前半の男女をターゲットにした「HOT HOLIDAYS!」というプロモーションを行っている。ことしは、これまでのイメージキャラクター4人に、新たに2人を加えた合計6人という陣容で、訴求を強化した。若年層を競馬場へ呼び、継続的な来場を目指す、その取り組みを紹介する。

2019年5月26日に開催された第86回東京優駿(日本ダービー)の様子。レースは浜中俊騎手が騎乗する12番人気のロジャーバローズが1着となった。
ターゲットをしぼり新規開拓に集中
1987年~1990年にかけて、競馬ブームがあった。立役者となったのは、いまも活躍を続ける武豊騎手や、人気馬オグリキャップをはじめ、スーパークリーク、イナリワンの「平成三強」。漫画作品やテレビゲームもヒットした。バブル経済に湧いていた経済状況も後押しし、老若男女を問わず多くの人を巻き込んだ、社会現象となっていた。
このときのブームは、1973年ごろの名馬ハイセイコーの活躍を契機に起こった競馬人気を彷彿させ、俗に「第二次競馬ブーム」と呼ばれる。
オグリキャップの引退レースとなった1990年の第35回有馬記念では、千葉県の中山競馬場に17万人を超える競馬ファンが集結。しかし、この第二次競馬ブームののち、来場者数は96年からは減少傾向にあり、この10年はほぼ横ばい。勝馬投票券(馬券)の発売金から返還金を引いた売得金は、97年に記録したピークを超えられていない。
少子高齢化を要因とする人口減少は、他業界の例にもれず、競馬界が直面する課題のひとつだ。日本中央競馬会(JRA)プロモーション部の濱田暁彦・調査役は、「JRAは基本的に、日本国内のお客さまを対象とした内需中心の事業で、安定的に成長させることを使命としています。既存のお客さまへのサービスはもちろんのこと、絶えず新規のお客さまにも加わっていただき、長く競馬を楽しんでくださるようにすることが、最重要事項となっています」と話す。
これまで実施してきた「CLUB KEIBA」(2008年~2010年)や、「あなたの競馬が走り出す。」(2015年)は、まさに新規顧客の獲得や定着を目的とした年間広告キャンペーンだ。前者は俳優の佐藤浩市や大泉洋が、後者は落語家の笑福亭鶴瓶や俳優の有村架純といった、人気を集めるタレント各氏が出演した。
いずれも全年齢対象(オールターゲット)だったが、2017年からはターゲットを若年層、特に20歳代~30歳代前半で競馬未経験の層に絞り込み、訴求を強めている。それまでも若年層への訴求は重視していたが、「来場者、馬券購入者数が漸減傾向にある中で、いずれもボリューム層は50歳代以上。平均年齢を見ても、日本の平均を上回っているため、継続的な顧客の獲得と維持のためには、やはり若年層に特化したプロモーションをしなくてはならない」と濱田氏は話す。
キャッチフレーズとして採用したのは「HOT HOLIDAYS!」。JRAの「このままでは……」という危機感は強く、キャンペーン開始を機にプロモーション部を立ち上げるまでに至った。
JRAではこれまで、広告宣伝やイベント、Webサイト管理などを、それぞれ異なる部署で担当していた。しかし今回を機に、特に新規顧客獲得のプロモーションにかかわる業務は、新設のプロモーション部へ移管。メディアや手法を横断して見ることで、テレビCMなどの広告キャンペーンだけではなく、競馬場への来場促進の施策を統合的に行えるようになった。
「新たな部署を立ち上げる前から、プロモーションの統合については意識して取り組んできましたが、プロモーション部ができたことで、組織として明確に打ち出せたと感じています」(濱田氏) …