スニッカーズが行ったキャンペーン「#スニリプ」は、実施期間中の3カ月で一度も失速することなく盛り上がりつづけ、合計3万6000件の投稿があったという。デジタルにおけるプロモーション経験が少なかったクライアントに対し、どのようにして企画は提案されたのか。

(左)I&S BBDO
クリエイティブグループ プランナー 久間木達朗(くまき・たつろう)氏
(右)BBDO JAPAN
エグゼクティブクリエイティブディレクター 本多正樹(ほんだ・まさき)氏
「かまってほしい」インサイトにアイドルからのリプライを
「おなかがすいたら──」のキャッチフレーズで親しまれるスニッカーズ。1980年代から長年にわたりテレビCMで認知を獲得してきたが、若年層への認知を広げるためにはデジタルの活用が不可欠として、4月から6月にかけての3カ月間、Twitterで「#スニリプ」と題したキャンペーンを行った。
スニッカーズは、キャンペーン開始とともに5種類の「お腹が空いてオカシくなっちゃった時の症状」を表す限定パッケージを発売。「#スニリプ」は、店頭で限定パッケージを含めたスニッカーズを購入し、「お腹が空いてオカシくなっちゃった時の状況」をテーマにスニッカーズが写った画像や動画を撮影してTwitterにハッシュタグ「#スニリプ」をつけて投稿すると、「アイドルマスター シンデレラガールズ」のアイドルたちからリプライが届くかもしれないという内容だ。
企画を考えるにあたって、ターゲットを10歳代後半から20歳代前半の男性に絞った。「ソーシャルメディアの使われ方について話をするうちに、『かまってちゃん』というキーワードが見えてきました。ソーシャルメディアにちょっとした自分の写真を投稿し、あからさまにアピールはしないけれど投稿には気付いてほしい、自分ががんばっていることを少しでも知ってほしいというインサイトがあることがわかったんです」(BBDO JAPAN エグゼクティブ クリエイティブ ディレクター 本多正樹氏)
そのインサイトを最も満足させられるのは「かまってあげる」ことだとして、投稿に対してリプライすることを考えた。次に誰からリプライをもらうと喜ばれるかを検討した際に挙がったのが、アニメのアイドルだ。
「調べると、アニメのアイドルはターゲットである10歳代後半から20歳代前半の男性たちの日常生活にとても浸透していることがわかってきました。しかもかなり熱狂的なファンがいる。特に今回起用した『アイドルマスター シンデレラガールズ』には183人もの女性のキャラクターがいて、それぞれの性格や発言は全部違うんです。その中の一人からリプライが届く──ファンであれば興味を持つのではないかと考えました」(I&S BBDO CMプランナー 久間木達朗氏)
企画書はビジュアル化して、イメージされやすくした
スニッカーズはこれまでテレビCMを中心にプロモーションを行ってきており、デジタルを使った新たな施策であるがゆえにそのフォローも考えていた。
「初めてこの施策を行うクライアントにとって最も気になるのは、この企画で本当に投稿が集まるのか、どうやって拡散していくのかといった部分。そこで、企画書にはターゲットが投稿を行い拡散していく流れや、リプライのようすなどをできるだけビジュアル化して落とし込み、イメージを分かりやすく伝えるよう心がけました」(久間木氏)
たとえば、投稿してアイドルから返信が来ると、投稿者は嬉しくなって自慢したくなり、リツイートする。それを見た人がさらにリツイートすることで認知は波紋のように広がっていき、影響力が大きくなる。ツイートを見た人は自分も投稿して返信をもらいたいとスニッカーズを購入し、投稿者本人ももう一度返信をもらおうとリピートする…といったように、企画が展開していく流れはフローチャートにした。また、実際の投稿イメージや返信イメージも作成して見せることで、言葉だけだと理解しにくいところも明確に想像できるようにした。
さらに、キャンペーン開始直後から投稿が集まるよう、Web動画を制作してYouTubeなどを用いて告知するといったことも早い段階で提案。動画の内容も細かく提示し、クライアントの不安を払拭できるよう努めた。
企画は限定パッケージの発売期間である3カ月間にわたって行うことがあらかじめ決まっていたため、飽きさせないための方策についても企画の内容とともに詰め、提案していった。
「『アイドルマスター シンデレラガールズ』は、スマホ向けゲーム。ゲームであれば1週間ごとに新しいアイテムが登場したり、新キャラを頻繁に登場させたりと、飽きさせない要素がふんだんに盛り込まれている。ターゲットはそういった環境に慣れているということを念頭に置き、ルールを作成していきました」(久間木氏) ...