「THE FILTER」
電子書籍では得られない紙の本の魅力のひとつが、手触りや質感だ。ブックジャケットをつけられるのも本ならではの楽しさ。このコーナーではさまざまな質感を持つ竹尾のファインペーパーを使用し、そこに多彩な印刷加工技術を掛け合わせることで、触って感じる新しいブックジャケットを提案していく。

柔らかな透け感のファインペーパー
2024年8月に発売された「SUKEKAKEラップCoC」はその名の通り、「透ける」「書ける」「包む」という機能を併せ持つファインペーパー。柔らかな透け感で封筒やラッピングペーパーなどに使いやすく、風合いがなめらかでスムースな手触りが特徴だ。
この個性を活かしたブックジャケットをデザインしたのはサリーン チェンさん。
白の2度刷りとグロスニスで紙の輪つなぎを思わせる模様をあしらい、包装紙のような佇まいに。表1と表4は繋げると「BOOK」になるよう文字を配置した。表1の「B」は透明ホログラム箔、表4の「OOK」はパール箔を施し、文字を囲むようにデボス加工を重ねている。
主張が強すぎず、さりげない世界観をつくり出すデザインが好みというサリーンさん。透け感があり、ニュートラルな白色の「SUKEKAKEラップCoC」は一目惚れで気に入った。「本を包んで終わりではなく、メモを書き込むこともできる。自由に使う可能性が残せる点もユニークだと感じました」。
デザインにあたってヒントとなったのは、とあるアーティストが「本棚の本を全てパラフィン紙で包んで並べている」と話していたエピソード。パラフィン紙で包むと本のタイトルなどをぼかして本棚全体の情報量を控えめにしつつ、トーンを統一することができる。この機能性を「SUKEKAKEラップCoC」を使うことで、再現できるのではないかと考えた。
「実際に本を包んでみると、本の背の部分はタイトルが透けて見えるので本棚に並べてみても確認しやすい。一方で、公共の場で本を読む時にプライバシーを守ることもできます。その絶妙なバランス感を大切にしました。色味や柄のあるカバーに重ねると元の装丁とはまた違う表情を楽しめて、あらゆる本と調和するブックジャケットに仕上がったと思います」(サリーンさん)。


市原湖畔美術館「かみがつくる宇宙ーミクロとマクロの往還」展覧会図録(2024年)。


横山創大写真集『REMIND』、作品パッケージのデザイン(2024年)。
今月使った紙:SUKEKAKEラップCoC
「透ける」「書ける」「包む」の機能を備えたファインペーパーです。柔らかな透け感を活かし、フィルム封筒やショッパーの代替としてお使いいただけます。筆記適性も良好で、折割れしにくいためラッピングペーパーにも最適。古紙としてリサイクル可能なFSC 森林認証紙です。

サリーン
チェン(さりーん・ちぇん)
香港生まれ。香港理工大学デザイン学科卒業後、新聞社でビジュアルジャーナリストとして勤務しながら、イラストレーターとしても活動。2016年香港ヤングデザインタレント賞を受賞。2017年来日、キギと創造に所属。2025年JAGDA
新人賞を受賞。