熱狂するショートコンテンツ

公開日:2025年6月26日

スマホ時代の新たなエンターテインメントとして、盛り上がりをみせる縦型のショート動画。SNSとの相性の良さやタイパ志向を背景に拡大し、多くのクリエイターやプラットフォーマーがしのぎを削っています。今回集まってくれたのは、総ダウンロード数230万を超えるショートドラマアプリ「BUMP」を2022年12月にリリース、韓国で現地制作したオリジナル作品を配信するなどグローバル展開を進める、emole代表の澤村直道さん。ひとりで制作したショートアニメをSNSに投稿し、総フォロワー数は630万人以上、今年1月には初の長編アニメ『メイクアガール』を劇場公開した、ゼノトゥーン所属のアニメ作家・安田現象さん。総再生数10億回を超える縦型ショートコントアカウント『本日も絶体絶命。』をはじめ、ドラマやバラエティなど数々の縦型ショートコンテンツを手がける、QREATION代表の米永圭佑さん。視聴態度の変化やマネタイズの方法、クリックさせる仕掛けなど、進化を続けるショートコンテンツの現在を語ります。

ショート化で加速した「創作の民主化」

澤村:230万ダウンロードを超えるショートドラマアプリ「BUMP」を運営しているemoleの代表を務めています。僕は大学を卒業してそのまま事業を立ち上げたのですが、最初はYouTubeなどの動画コンテンツを自分たちでひたすら制作していたんです。ただ、そこから作品が生まれても、なかなかクリエイターに収益を還元することができないと感じて、2022年12月にBUMPをリリースしました。

安田:劇場アニメやミュージックビデオの監督をしながら、自分のアカウントでもSNSに向けたショートアニメをつくる活動もしています。最近だとディズニー映画『モアナと伝説の海2』のプロモーション映像や、コカ・コーラさんのSNS向けショートアニメにも関わらせてもらいました。

米永:僕は、日本テレビで『有吉ゼミ』のディレクターや『有吉の壁』のビジネスプロデューサーを務めたあと、DispoというアメリカのZ世代向けサービスのカントリーマネージャーを経て、QREATIONを創業しました。10億再生を突破した縦型のショートコント番組『本日も絶体絶命。』や、遠藤憲一さんが出演する縦型ショートドラマ『いつだって究極の選択』といったコンテンツを制作しています。

澤村:ショートドラマが登場したのが2020年前後。TikTokが流行して、InstagramのリールやYouTubeショートが実装されたり、映画をダイジェストにして配信する「ファストシネマ」が問題になったり。ただ、バズっているのはワンシチュエーションのドラマばかりで、まだストーリー性のあるショートドラマはあまりなくて。

安田:まさに、当時SNSでは漫画やイラストがライト化されたコンテンツとして楽しめるのに、アニメの分野にはそういうものが存在しないことを疑問に思っていたんです。そこでTwitter(現X)にショートアニメを投稿してみたら、日頃自分が仕事でつくっていた作品よりもずっと多くの人に見てもらえて。

米永:僕はDispo時代に、TikTokを中心にデジタル世代の若いクリエイターたちが次々と生まれていることを知りました。彼らの若くて新しい感性と、テレビで培ってきたクリエイティブを掛け合わせたら、デジタル発で世界に出ていけるエンターテインメントコンテンツが生み出せるんじゃないか。そう考えたのも、起業をしたきっかけのひとつです。

澤村:BUMPは、漫画アプリのように楽しめるショートドラマアプリで、1話が1分半から3分ぐらい。1タイトルあたり10~30話で、最初の何話かは無料で、途中からは広告の視聴や課金が必要になります。

安田:どのSNSでもショート動画は縦型で、いいねやコメント、シェア機能があって、スマホに最適化されていますよね。

米永:スマホって自分が好きなときに見るメディアなので、長尺のものは難しくなってきているし、コンテンツも視聴形態に合わせた形に進化しています。いつの時代も、人が集まるところにクリエイターやコンテンツが集中して、量から質へ転換していく。それが、今のショートコンテンツ業界に起こっていることなのかなと。

澤村:視聴する側だけでなく、つくり手の環境も変わりましたよね。コンテンツがショート化されることで、プロしかつくれなかったものが、より低予算で、自分たちの手で形にできる。ドラマの場合はなかなか難しい部分もありますが、いずれにしても「創作の民主化」が起きて...

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