アートディレクションを多様な視点から学ぶ、宣伝会議「アートディレクター養成講座(ARTS)」。今回で24期を迎えた本講座では、半年以上にわたり講義が行われ、受講生が卒業制作に取り組んだ。「任意のクライアントを設定し、ブランディングデザインをしてください。制作するアイテムは自分で考えてください」という課題を出題。受講生は、実在の企業、ブランド、店舗などを題材とし制作、柿木原政広さん(10inc.)、河合雄流さん(電通)が講評を行った。受講生がクライアントに自主提案をするかのように、企画とクリエイティブをつくり上げ、プレゼンを実施。ここではその中から選ばれた優秀作8作を紹介する。

柿木原政広さん(10inc.)

河合雄流さん(電通)
金賞
柿木原クラス
石川知弥


企画意図
「日々のラジオ体操が紡ぐ、活力ある未来へのビジョン」をコンセプトに時間と場所を選ばずラジオ体操ができるスマホアプリを企画しました。すでに認知度が高い「ラジオ体操」の文言はそのままに、100%や100レベル、100人でこのアプリを使ってほしいなどの意味を込めてサービス名を「ラジオ体操 第100」としました。アプリ内のポイント機能やログイン機能など、アプリならではの仕組みで楽しく体操を続けることができます。また、体操をすることによって得られたポイントは限定のヤクルトやTシャツなどと交換できます。
ARTSを受けて
アートディレクションとは頭の中のモノサシで物事を測ることだと思います。最初にモノサシの単位を決める。そしてそのお手製のモノサシで最終的なアウトプットまでの全てを測っていく。この一連の流れをARTSで沢山学びました。今日の拡張していくデザイン領域の中でアートディレクターは正しい評価軸を見定めることが求められています。ARTSはその訓練と実践ができる場所でした。半年間ありがとうございました。
金賞
河合クラス
川崎麻由
(電通クリエーティブX)

企画意図
地元・宮崎県にある霧島酒造の商品「黒霧島」。もっと九州以外の若い人たちに愛されるお酒になってほしいと考え、霧島ペットをリブランディングしました。焼酎の強みである「割り」の醍醐味を活かし、鍋の汁やおでんの出汁と割って飲むシメのお酒として、リデザインしました。強いお酒の印象を和らげるため、ロゴも霧島山と「〆」を合わせた形で黒霧島の伝統や歴史を感じさせるシンプルなものにしています。アイキャッチシールで新しい飲み方を勧め、商品をよりユーザーに浸透させます。
ARTSを受けて
さまざまな分野で活躍されている講師の皆さまから、毎週新たな視点に触れ、とても刺激的な半年間でした。また、同世代の受講者と切磋琢磨し合いながら課題に取り組んだことも、大きな成長に繋がったと感じています。小さな成功体験であっても、積み上げることが大切だと実感し、自信に繋がりました。今後も次のステップに向けて、邁進していきたいです。半年間、ありがとうございました。
銀賞
柿木原クラス
山本ひかり
(電通デジタル)

企画意図
私の実家である綿金(ワタキン)は、新潟県南魚沼市で150年以上続くふとん屋です。創業時は綿屋であったことと、昔の看板の鶴を掛け合わせてロゴをデザインしました。一般のお客さま向けのブランドカラーは、布団の中で目覚めた時のぼんやりとした光をグラデーションに、旅館など法人向けには雪深く静かな夜を藍色で表現しています。また、地元と共に今後も続くブランドにしたいという思いから、地元らしさを詰め込んだワークショップキットも制作しました。地元を起点にしたコミュニケーションで、これからも愛される綿金でありたいと思っています。
ARTSを受けて
ARTSでは、想像していた何倍もの学びがありました。さまざまな角度から考え尽くすこと、悩むことは健全であること、自分の得意を活かすこと、クライアントと対話をすること、講師の熱量のこもった言葉や素晴らしいクリエイティブの数々に、思わず泣いてしまいそうな講義もありました!それを一緒に語ったり制作したりできる仲間にも出会えました。沢山の学びを活かせるように今後も頑張ります。本当にありがとうございました。
銀賞
河合クラス
八木橋ひかり

企画意図
コンドームは本来、性感染症予防や避妊を目的とした医療器具であるにもかかわらず、アダルトグッズを思わせる見た目や売り方に常々疑問を感じていました。これではコンドームの重要性がきちんと伝わっていかないのではと考え、コンドームを「医療器具」と認識してもらうことを目的とし、パッケージからデザインを展開することにしました。ブランド名は「おもちゃにしない、させない」という想いを込めた「notoy(ノートイ)」とし、医療っぽさもありつつどこかあたたかみを感じるデザインを目指しました。
ARTSを受けて
札幌からの受講だったため最終発表以外はオンラインで受講しましたが、受講生の皆さんのレベルも高く、オンライン参加でも刺激的で学びの多い半年を過ごすことができました。卒業制作は反省点もたくさんありますが最後までやりきった結果、銀賞をいただけたことで自信になりました。アートディレクターとして新たな一歩を踏み出すことができそうです。あたたかく見守ってくださった皆さまに心から感謝いたします。
銀賞
河合クラス
並木優祐

企画意図
新宿駅で乗る列車に迷う訪日客を見かけます。日本は鉄道大国ですが、路線網や直通サービスが少々複雑です。わかりにくい日本の鉄道のルートを旅行者自らデザインし、冒険するように鉄道に乗るためのガイドブックをデザインしました。このガイドは路線図・駅リスト・各路線の停車駅ガイドからなる構成です。路線図はグリッドで区切られ、駅リストの駅名から位置を把握し、現在地と目的地を自身で理解しルートをデザインします。乗る路線は各路線の停車駅ガイドから見つけます。このほかにも鉄道旅を深める「駅弁・駅そば・駅スタンプ」なども紹介し、日本の鉄道の価値を再発見できる一冊にしました。
ARTSを受けて
私はメーカーで広告のデザインをしています。講師陣の講義を直接受けることで改めて自分の置かれた会社での立場の重要性を理解しました。「センスは合う・合わない」という言葉を大切にし、伝えたいターゲットに真っ直ぐ伝わる表現を重要視するようになりました。また、講座で知り合った同期との出会いも「私ももっと頑張らなきゃ」というモチベーションになりました。
銅賞
柿木原クラス
椎葉 麻亜里
(Adver)

企画意図
「一番身近な存在なのに親の人生って意外と知らない」「聞けるうちに聞いておけばよかった」。そんな言葉の数々から、自分の親がどんなことをしてどんな思いで生きてきたのか、親本人に人生を振り返りながら語ってもらうボードゲームを制作しました。「知りたい」けど「知らない」理由を辿ると、親子間での直接的なコミュニケーション不足が見えてきます。向かい合っていざ話そうとすると照れくさいことも、ゲームのルールに則れば気軽に、熱く語り合えるのではないか。ゲームを通じて本当は聞きたかったこと、話したかったことを語り合える関係づくりを目指します。
ARTSを受けて
仕事を通じた成長の過程で、未だ殻を破りきれない自分自身にじりじりする思いが常に心の片隅にありました。講師の方々の言葉一つひとつに刺激を受け、受講生の皆さんの考えや課題作品にも強い驚きや頷きを得たこの半年間が、私の凝り固まった頭をほぐしてくれたように思います。ARTSの紹介に「ブレイクスルーのきっかけに」とあったのは本当でした。今回の経験を糧に、日々研磨を重ねていきたいです。
銅賞
河合クラス
黒田夏葉
(読広クリエイティブスタジオ)

企画意図
スポーツ日本代表のブランディングをテーマに、競技ごとに異なる代表ユニフォームデザインの統一を考えました。日本のスポーツが世界で存在感を増す近年、国内外への発信力をより高めることを目的に、「日本をまとう」というコンセプトのもとユニフォームからマニュアルまでを設計。選手と観客がどの競技でも同じユニフォームを着用することで、日本代表の認知を世界に広めます。また、観客は一枚のユニフォームでさまざまな競技観戦ができるので、各競技団体にとっては新規ファン獲得も狙えます。競技の垣根を超えて選手もファンもONE TEAMとなれたら、日本のスポーツ文化を楽しむ人も増え、より活気づくのではと思い企画しました。
ARTSを受けて
日々の業務以外でも刺激を受けて成長したいと思い受講しました。特に考え方の部分に興味があり、講義と課題を通してさまざまなお話とアイデアをうかがい視野が広がりました。現業に繋がる学びも多く、講座内で得たことを今後の自分の力にしていきたいです。仕事との両立をはじめ多方面でお力添えくださった皆さま、ありがとうございました。
銅賞
河合クラス
吉田典世
(アドブレーン)

企画意図
自炊に対してハードルを高く感じる人は少なくないと思います。私はその原因が、調理器具を揃える、つくるレシピを探す、材料を揃えるなど、自炊初心者にとって最初の1ステップ目から難易度が高いからではないかと考え、調理器具や材料が揃っている環境で自ら調理ができる「セルフ食堂」を企画しました。“自炊みならい”が集まる食堂ということで「みならい食堂」というネーミングも考えました。ロゴデザイン、ポスター、お店で使うエプロンや、お店の外観や内装、自宅で調理ができるようにミールキットの展開を考えビジュアルを制作しました。
ARTSを受けて
自分の企画力に自信がなく、今よりステップアップしたいという気持ちでARTSを受講しました。第一線で活躍されている講師の方から直接お話が聞けることはとても貴重な体験で、毎週火曜日が来ることが楽しみでした。演習課題では、講師の方からアドバイスをいただき、自分の足りていない部分が前より明確になりましたし、「もっと実力をつけたい」とより自分を鍛えたい気持ちになりました。受講して良かったと思います。

第25期アートディレクター養成講座は
2024年8月20日に開講します
日本随一のアートディレクションを教える学校。それが宣伝会議アートディレクター養成講座です。今年で第25期を迎え、これまで2500名を超える方が受講。修了生の多くがアートディレクターとして活躍しています。単にデザインの表現と技術を学ぶだけではなく、トップクラスのアートディレクターたちの思考のプロセスと判断基準に基づくアートディレクションの方法を身につけていきます。随時、無料説明会と体験講座を実施いたします。詳細は下記までお問い合わせください。
講座概要 | |
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開講日 | 2024年8月20日 |
実施曜日 | 毎週火曜 19:00~21:00、一部土曜 13:30~16:30もしくは18:30~21:30 |
講義回数 | 全30回 |
実施形態 | オンライン・オフラインの併催。講義ごとの自由選択制。 |
定員 | 90名 |
受講料 | 税込 187,000円(申込金22,000円含む) |
お問い合わせ | 宣伝会議 アートディレクター養成講座事務局 メールアドレス:arts@sendenkaigi.co.jp |
講座への申し込み、説明会・体験講座の予約は <こちら>
※掲載作品は各人の仕事ではなく、全て課題として制作したものです。