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クリエイターと未来の顧客を共創 事業開発の進め方

「B面」の視点から生まれた3つのプロトタイプ

2017年に設立された、「先行開発」に特化したパナソニックのデザインスタジオ「FUTURE LIFE FACTORY」(FLF)。21年度はマッキャンアルファのクリエイティブパートナー 吉富亮介さんがパートナーとして加わり、3つのプロトタイプをつくり上げた。

01 「Carbon Pay」ではカーボンフットプリントが可視化されるアプリの構想や、家電のプロトタイプを制作。

アイデアの共通項を言語化

FLFは人々の価値観の変化や社会課題を元に新規事業の種を生み出し、未来のくらしのビジョンを提案することを専門にしたチームだ。これまで、心理的なパーソナル空間を着るデバイス「WEAR SPACE」、時間軸を自分軸に変える“はたらいきかた”改革プロジェクト「3rd TIME」などを生み出してきた。

マッキャンエリクソンの事業共創組織マッキャンアルファのクリエイティブパートナー 吉富亮介さんは、2021年4月から外部パートナーとしてFLFに参画してきた。「アルファは新規事業や製品開発の部署の方々と、こと・ものづくりをご一緒する組織。僕はFLFに7人目のメンバーかつFLFが21年度に生み出すべきアイデアを推進する役割で参加しています」(吉富さん)。

FLFでの企画開発は、課題の解決方法を考えるところからではなく、今課題とすべきことは何かを捉えるところから始まる。「各メンバーが今興味ある分野の課題を持ち寄り、未来に対してどんな問いを立てるべきか議論することから始まります。21年の5月末頃までに挙がった大小43個以上のアイデアを元に考えていきました」(#01)。

さまざまなアイデアの説明の中で、よく触れられていたのが「バイアス」という言葉だった。「無意識のバイアスやメディアが発信する情報のバイアスなど、世の中で当たり前とされている固定観念に対して、皆が課題を感じていることがわかってきました。そこから考えた年間のテーマが『B side』(#02)です」(吉富さん)。

固定観念を導く物事の見方をA面としたとき、それとは異なる側面(B面)に着眼しようとする意味だ。パナソニックでいえば、たとえば家電などの王道製品・サービスをA面としたとき、FLFではB面に取り組むことに。「そうすることで新たな価値に出会えるのではないかと考えた」と吉富さん。

以降、プロジェクトでは、「これはB sideな企画か?(いやA sideか?)」という問いが度々発せられるようになる。「FLFだけでこれをやろうとすると、言葉や基準をここまで明確に定められない。この言語化というのが、吉富さんにジョインしてもらってよかったポイントのひとつです」とFLFのデザイナー 井野智晃さんは話す。

「B side」な企画たち

この「B side」を軸に議論を重ね、FLFでは21年に3つのプロジェクトを立ち上げた。「Carbon Pay」(#03)は、自分のカーボンフットプリントの量を金額化し、CO₂を吸収する取り組みに支払うことで支援することができる仕組みのことだ。個人の年間のカーボンフットプリントや今後の目標値も確認できるアプリを構想。合わせて、それを日々の生活の中で意識し実行できるよう、カーボンフットプリントが可視化される家電のプロトタイプを制作。リモコンやコーヒーマシンにモニターをつけ、ボタンを押すだけで簡単に支払えるようにした。

結果的に脱炭素化に向けた行動変容を促す企画になったが、当初のアイデアは「ジェネラティブライフ」だった。「リモートワークが増えて、世界が激変する中で変化していない自分に危機感を覚えたんです。そこから行動の変化に着目し、今変わるべきことは?と考え、環境に対する意識や行動を変える今回の取り組みに結実しました」(井野さん)。コンセプト展示を経て、現在はより具体的な実装方法を検討している。

2つ目の「言山百景」(#04)は、コロナ禍やメタバースの普及によって希薄になってしまう地域コミュニティとの関係性を取り戻し、その先で...

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企業や団体が新たに取り組む事業やプロジェクトにクリエイターが参画する際、一体どのような役割が求められているのか。一方的な提案ではなく、事業主とクリエイターが良きパートナーとして傾聴と対話を重ね「共創」を進めていくスタイルが広がっている今。そのプロセスはやがて、未来の顧客の創造につながっていきます。今回は実際にローンチされた事業やプロジェクトの実例について、提案書類や企画書など実行に向けてのプロセスがわかる資料を紐解きながら、企画実現のポイントを探っていきます。