60年の画業と対峙し、「ものを見る」営みを知る
ゲルハルト・リヒター展
ドイツ東部のドレスデンで生まれた現代アートの巨匠ゲルハルト・リヒターは、油彩画に写真、デジタルプリント、ガラスや鏡など多様な素材を用いて具象と抽象を行き来しながら、人がものを見て認識する原理自体の表現に取り組み続けてきた。
リヒターが90歳を迎えた今年、東京の美術館では初となる個展が開催される。本人が手放さずに所蔵してきた初期のフォト・ペインティングからカラーチャート、グレイペインティング、アブストラクト・ペインティング、オイル・オン・フォト、そして最新作のドローイングまで、約110点を通じて60年におよぶ画業をたどる試みだ。
本展では、アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所で囚人が隠し撮りした写真を描き写したイメージが絵具の下層に隠された、4点の巨大な抽象画からなる《ビルケナウ》が日本初公開される。「(自らの芸術的課題から)自分が自由になった」と感じたとリヒター自身が語ったように、彼の達成点であり、転換点にもなった最重要作品だ。
「ものを見る」とは、視覚に限らず芸術やホロコーストを内包する20世紀ドイツの歴史、作家自身やその家族の記憶、そして我々の固定観念や見ることへの欲望が絡み合った営みそのものを意味している。

ゲルハルト・リヒター《モーターボート(第1ヴァージョン)(79a)》1965年 ゲルハルト・リヒター財団蔵 油彩、キャンバス 169.5×169.5cm

ゲルハルト・リヒター《ビルケナウ(937-2)》2014年 ゲルハルト・リヒター財団蔵 油彩、キャンバス 260×200cm

ゲルハルト・リヒター《4900の色彩(901)》2007年 ゲルハルト・リヒター財団蔵 ラッカー、アルディボンド、196枚のパネル 680×680cm パネル各48.5×48.5cm
©Gerhard Richter 2022(07062022)
ゲルハルト・リヒター展 | |
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6月7日〜10月2日 |
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