2019年度TCC賞 受賞リスト

グランプリ
三井住友カード/企業広告「奇妙なモノを持ち歩いてるもんだ お金ってなんなんだろう」
TCC賞
タクティー/jms「連続10秒ドラマ『愛の停止線』」
UHA味覚糖/さけるグミ「昼下がりのさけるグミ」
住友生命保険/1UP/Vitality「走りたい気持ちを抑え、廊下では早歩きの上田。」
リクルートライフスタイル/ホットペッパービューティー「キッカケなんか、春でいい。」
アンファー/スカルプD メディカルミノキ5「ミノキなら、生える。」
宝島社/企業広告「あとは、じぶんで考えてよ。」
宝島社/企業広告「嘘つきは、戦争の始まり。」
カシワバラ・コーポレーション/企業広告「うち1階なのに 負担同じなんですか?」
ストライプインターナショナル/earth music&ecology「心って、心の持ちようだネ。若さなんて、転がる石よ。」
WACK/WACK「大変申し訳ございません。まだ何もしてませんが、先に謝罪しときます。私達は間違えます。」
全国都道府県及び全指定都市/ロトシリーズ「ぼくたちロトもだち」
大日本除虫菊/金鳥の渦巻き「株で、大もうけしたような奴は、株でまた大損すればいいのに。」
富士通コネクテッドテクノロジーズ/arrows Be「待てない刑事/割れない刑事/汚れない刑事」
日清食品ホールディングス/日清のどん兵衛きつねうどん「♪つるつる音をたてながら あなたはどん兵衛すすってた」
審査委員長 磯島拓矢
新聞突き出しのコピーと180秒のWebムービのコピーを比較することは困難を極めます。審査員誰もが毎年頭を悩ませています。でも今年はなぜか、それを前向きにとらえる自分がいました。僕の中で、この悩みが折り返し地点を迎えたのでしょうか。(ある種の)審査の正しさやクライテリアの明確さを求めるならば、それぞれのジャンルやメディアに応じての審査となるでしょう。でもそれは事態のたこつぼ化を招くだけで、ダイナミズムはないように思ったのです。
「言葉」というざっくりしたリングに、あらゆるジャンルから参加者を募る。その中で優れた言葉を探す強引な試みの方が、言葉の可能性を開くきっかけになれるのではないか、と思ったのです。今年票が割れたのは、さまざまなジャンルから言葉を募った結果生まれる、言葉のさまざまな使われ方(可能性)に、審査員みんなが反応したからのように思います。どうなんでしょう。
秋山晶
飛びこえる広告
WebMovieが本格化した。時代がWebに来たのだ。10秒のドラマをつくった、jms。リリー・フランキーの芸を楽しませる、さけるグミ。女子高生の春の生き生きしたレプリカ、ホットペッパービューティー。この3作は発想から仕上げまで制作者の強い意志でつくられている。
TVCMはどうだろう。三井住友カード。太陽の低いアナザーワールド。トリッキーにつくられた事実のコピーを、先鋭な映像で最先端のCMにした。
麻生哲朗
つまらない部分も結構あるけど、すごく面白い部分が気になるから、残す。結構面白い部分があるんだけど、とてもつまらない部分が気になるから、はじく。この線引きは毎回難しいです。両者のバランスや関係性で全体ができてたりもするし、ここが悩む醍醐味でもあります。つまらないのに、面白そうなふりをしている、これだけは明快に避けるつもりで臨んでいます。今年はそういう作品が格段に少なかった、つまり健やかだった印象です。特にWebで。
一倉宏
グランプリをはじめ、新鮮な手法で、力強い作品が多かったと思います。ここ数年、新しい話法の開拓が見られるようになり、今回はそれがさらに進んだという感じがします。メディアの多様化もありますが、結局のところ、広告をつくる基本の要素はそんなに変わりません。だからこそ、手法や話法の新しさが大切ということなのでしょう。
井村光明
ポスターだとアダストリア、そごう・西武、ヒラキ、大人の休日倶楽部、ムービーだとBINGO5やDr.Loupe等々。シリーズ広告の中に好きなコピーがたくさんあったのですが、審査が進むうちにシリーズが歯抜けになっていくのがとても残念でした。
ゆえに尚更思い知らされたのは、シリーズばかりの中を単品で入賞した2作品の存在感です。特にホットペッパービューティー、あれほどの長尺を全く作為を感じさせないセリフ回しで引っ張る力量。1本で強い、かっこいい。
岩田純平
特に好きだったのはホットペッパービューティ「春」でした。せつなさと前向きさのさじ加減。青春ってそうだよなあ、と。ブランディングでもあり、商品広告でもあるような、何度でも見れるムービーでした。あとは、宝島社「嘘つきは、戦争のはじまり」、最高新人賞のフリクション「ネタ帳」、賞には入らなかったけど、そごう・西武「母の日テスト」、資生堂「肌色にも新色があります」も好きでした。今年のTCC賞は銘柄もけっこう変わり、時代の節目のようなものを感じました。いまがチャンスかも(と毎年思っている)。
太田恵美
受賞のみなさま、おめでとうございます。受賞作を眺めていると、事前に「もしや」という気が一瞬でもかすめた自分が恥ずかしくなります。とくに連作や長尺ものは、流れている時間の質が違う。コピーライターの力量にはただただ賞賛しかありません。同時に感じたのは、コピーがどうあれ、15秒CM一本やグラフィック一枚で世の中に出てゆくことの無力感。「人はそう簡単にその気にはならないからね」と釘を刺されたわけです。痛かったです。
尾形真理子
コピーは、狙いのある言葉。その「狙い」をどこに設定するかでコピーに差が生まれ、「狙い」を楽しんでもらえるかどうかにクリエイティブの技術はあるのだと感じる今年の審査でした。
「キャッシュレス」が急速に普及していく社会で、お金について一人ひとりが考えるきっかけをくれたグランプリ。新しいシステムにただ押し流されるのではなく、ちょっと立ち止まって自分のお金の置き場所を考えさせてくれる。広告の本質的な可能性に心震えました。
岡本欣也
Honda CR-Vのナレーション、攻めすぎない守りすぎないお金の生存戦略、学情のグラフィックシリーズ(これは二次に残っていないものもよかった)。審査からだいぶ時間がたってしまってほとんどすべてを忘れましたが、この3つはなぜかいまだに覚えている。そういう不思議な強さを持ったコピーが好きだ。あと新人賞は、毎年言っているような気もしますが、今年は本当に応募作品のレベルが高くて、受賞は至難のわざだなと。だから受賞した方はもちろん、一次を通過した方もちょっと胸を張っていいと思う。
小野田隆雄
静かな印象があった。TCC賞2019の作品について、そのような印象を強く持った。静かな風景とか言葉や音楽が静かであったというのと、少し異なる。私が感じた印象の180度逆にある印象は、国会議員選挙における候補者の演説であると言えば、ご理解いただけるだろうか …