新卒の学生の就職活動について、経団連は通年採用を広げていくことで大学側と合意。従来の一括採用のルールが大きく変わってくる。また、売り手市場の昨今、企業の採用コミュニケーションのあり方で採用活動の結果が大きく変わっていきそうだ。そこで、ここでは採用活動のコミュニケーションに関わっている2組のクリエイターに採用広告のクリエイティブの考え方について聞いてみた。
自社だからこそ語れること
『広告のやりかたで就活をやってみた』を2011年に上梓した電通ビジネスデザインスクエア プランナー 小島雄一郎さん、そしてアートディレクターの小島洋介さんは、「まさに『広告のやりかたで採用をやってみた』を実践しています」という。電通若者研究部(電通ワカモン)にも所属する2人は、そこでの知識や経験、さらにはクリエイターとして広告や広告以外の領域のビジネスに携わってきた知見をかけわあせて、企業の採用コミュニケーションに取り組んでいる。そんな2人が、採用コミュニケーションで重視しているのが、次の3点である。
1 採用メッセージの開発
2 統一したイメージとデザインフレーム
3 Web、パンフレットなどを適材適所で使い分けること
特に採用メッセージについては「明文化していなかったり、夢、理想、変革、挑戦…といったありきたりの言葉を使っている企業が少なくない」と指摘する。
「かつて電通も採用メッセージを掲げていない時期がありました。学生たちは外から見たイメージだけで判断してしまうので、就職人気ランキングは落ちる一方でした。しかし、ここ数年『答えが無いから、電通がある』『電通が作るのは、前例がない未来だ』『電通を、使え』など、電通ならではの明確なメッセージを出したところ、これまでとは違う領域の人が面接に来るようになり、明らかに変わりました。それはメッセージがきちんと伝わったからだと、考えています」。
採用メッセージを作る上で大事にすべきことは、「他社が語っておらず、自社だからこそ語れること」、そして「若者たちの気持ちを踏まえた言葉で語ること」。「商品広告を企画する時、企業の皆さんは競合を意識して考えますよね?ところが、採用広告の場合、その競合視点が欠けてしまう」。採用サイトなどで使うビジュアルもメッセージ同様、業種が違えど同じようなイメージが使われていることが多い。
「少し優しいイメージにしたいときは、河原や子どもの後ろ姿、未来に向けたイメージにしたいときは荒野など開けた風景をよく見ますね。核となる採用コンセプトやメッセージがないと表現が曖昧になり、結果として伝えているつもりが実は全く伝わっていない、ということも起こり得ます」(小島雄一郎さん)。
短い時間でいかに印象に残せるかが勝負
メッセージと併せて、重視すべきものは「デザインフレーム」だ。「これは採用広告に限らずですが、同じ内容を伝えるのにWebはA社が作り、パンフレットはB社が作り、イベントでは登壇者がパワーポイントで作り、というようなことがよく起きています。でも、よりよく伝えるためには統一した世界観が必要で、メッセージと対になるデザインフレームを設けることが有効だと考えています」(小島雄一郎さん)。
例えば今号で紹介した日立製作所の事例を見てほしい。「ゆずれないものがある。」というキャッチフレーズと共に...