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「ポスト2020」のアートディレクション

本質を見極め、みんなの見たいイメージを作る。それが出来れば常識を壊すきっかけになる。

  • 徳野佑樹(TBWA HAKUHODO)

さまざまな領域のデザインを手がける徳野佑樹さん。その仕事で自身のアートディレクションはどのように変わったのだろうか。

TBWA\HAKUHODO HEAD OF ART 徳野佑樹(とくの・ゆうき)
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。2007年博報堂入社。2013年よりTBWA\HAKUHODOに所属。ポスター、VI、パッケージ、CMなど多くのデザイン領域を手がける。東京ADC賞、カンヌライオンズデザイン部門ゴールド、NYADCゴールド、CLIOゴールド、クリエイターオブザイヤー2018メダリスト、ACCイノベーション部門グランプリなど受賞多数。

「言葉のないデザイン」はしない

──博報堂からTBWA\HAKUHODOに移ったことで、アートディレクターとして手がける領域は広がりましたか。

2007年に博報堂に入社し、2012年からTBWA\HAKUHODO(以下、TH)をベースに仕事をしています。入社してから4、5年はポスターやCMの企画を考えていましたが、TH移籍後はグラフィック、CM、それ以外の施策と、360度で考えることが増えました。それに伴い、クリエイティブディレクター、コピーライター、アートディレクター3人で進める仕事が減り、PRやテクノロジストなど、さまざまな職種の人と一緒に仕事するようになりました。

当時のTHはデザインが強いというよりは、コンセプトメイクが強い会社という印象でした。THの仕事はポスター1枚だけを作って終わるものはほぼありません。課題の本質を捉えて、広告に限らず、さまざまな形に展開するので、どちらかといえば難しい内容が多いと感じました。そのため、アートディレクターとしても「クリエイティブの最適なコースを導き出せる人」になることが求められました。

──その中で、ご自身のアートディレクションをどのように確立しましたか?

THのクリエイティブは、強いコンセプトと言葉があるけれど、クラフト力はもっと強くできる余地があると感じていました。自分自身のアートディレクションでも、そこが弱いことを自覚していました。そのため、クラフトを突き詰めてビジュアルを強くすることで、クリエイティブの飛距離を伸ばすことに取り組みました。

初めてその手応えを感じたのが、2015年に手がけたSUNTORY WHISKY『3D on the Rocks』のキャンペーンです。このときはとにかくクラフトに力を入れてデザインをやりきった結果、国内外で賞をいただき、世の中で話題にもなり、伝わる距離が一気に伸びる感覚を掴むことができました。

もうひとつ意識したのは、「言葉のないデザイン」はしない、ということです。言葉というのはコピーのあるなしではなく、言いたいことがないデザイン、見た目がきれいなだけのデザインはしない、ということです。言いたいことを伝えるためには、広告としての機能美はもちろん、説得力のあるクラフトが必要で、それがあって初めて人に届くと考えています。

広告も、広告以外の社会問題も本質を捉えて課題を解決する

──広告以外にも、車いす「COGY」などソーシャルイシューも手がけています。

東北大学とTESSが開発した"あきらめない人の車いす"「COGY」は、THという会社だからこそできることの可能性を感じ、自分の意識が変わった仕事でした。この車いす自体は以前に開発されていたのですが、優れた機能や本質が理解されておらず、当初から「もっとこうしたら伝わるのに」という点がたくさんあるプロダクトでした。そこに新たなネーミングとコンセプトをつけることができたら、世の中に広がり、人々の意識を変えるものになるのではないかという予感がありました …

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この記事が含まれる特集

「ポスト2020」のアートディレクション

2000年代前半、広告界では佐藤可士和さんを筆頭にアートディレクターの仕事が広く世の中から注目されるようになりました。新聞広告やポスターを作ることのみならず、OOHでのダイナミックな展開やグッズ・商品開発、さらにはブランドや企業のCIなどまでを手がけ、アートディレクションの可能性とアートディレクターの関わる領域が大きく広がっていきました。

さて、そこから20年近くを経た現在、広告のメディアは大きく変わっています。ポスターからサイネージへ、そしてWeb、さらにはスマートフォンで見るSNSでの広告や動画、プロダクトなど、アートディレクションの表現領域がさらなる広がりを見せています。向き合わなくてはいけない領域やメディアが増える中で、今アートディレクターたちはどんな考えで、自身のアートディレクションを確立しようとしているのか。本特集では、30~40代のアートディレクター9人に、今、そしてこれからの「アートディレクション」について聞きました。