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「ポスト2020」のアートディレクション

『そもそも』の意義から考えて作るコンセプトメーカーとしての役割

  • 上西祐理(電通)

若くして、国内外の広告・デザイン賞の審査員を数多く務めている電通 上西祐理さん。今年で入社10年目を迎えた上西さんが、アートディレクターとして転機を迎えたのは、ヤングカンヌのコンペに参加したこと。その時の気づきが、デザインに対する考え方を変えたという。

電通 アートディレクター 上西祐理(うえにし・ゆり)
1987年生まれ。東京都出身。2010年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業、同年電通入社。これまでの仕事に、世界卓球2015ポスター(テレビ東京)、LAFORET GRAND BAZAR 2018 SUMMER(LAFORET)、FUTURE-EXPERIMENT.JP(docomo)など。主な受賞歴:東京ADC賞、JAGDA新人賞、CANNES LIONS金賞など。趣味は旅と雪山登山。旅は現在40カ国達成。

自分はデザインで何ができるのかを考え続けた10年

──キャリア10年目に入られました。入社から現在まで、ご自身にどんな変化がありましたか。

若い頃は単発の仕事を任されることが多かったですが、年次を重ねるごとに責任度が増したこともあり、より大所から考えていくようなプロジェクトに取り組む機会が増えました。いまでもグラフィックが大好きですし、私のベースであることに何ら変わりはないですが、作ることの"必然性"を考えるようになったのが一番の変化だと思います。

そもそもこの広告は必要なのか、今世の中は何を必要としているのか、嘘のないように作りたいという気持ちが強くなっています。尊敬するクリエイティブディレクターの小松洋一さんが、広告のコンセプトやメッセージ、「世の中に何を伝えるべきか」という社会的意義などを常に考えている姿を見ていたので、そうした影響も受けて、今の私になっているのかもしれません。

一番のターニングポイントは、入社4年目に参加したヤングカンヌ。ポスターをたくさん作れるだろうと電通に入った私ですが、海外の広告に触れたことによって、"伝える"ことでブランドに寄与するのが本当のグラフィックデザインなのだと認識を改める機会になりました。また、デザインと広告の垣根も消えました。日本にいると鈍感になりがちですが、私たちは誰もが社会とつながっていて、社会には色々な問題があります。それを広告やデザインで解決するのは無理だとしても、何かしらのきっかけになるような仕事をしたいなと考えるようになったんです。

それから、カンヌライオンズでクリエーティブディレクター 菅野薫さんと出会い、一緒にやろうと声をかけていただいたことも大きかった。仕事をする度に、「テクノロジーを使えばこんなことができる」という新しい学びがあり、ならば私はデザインで何ができるのかを産み出さざるをえなくなりました。また菅野さんの挑戦的な姿勢にはいつも鼓舞されます。そして、夢中でチャレンジと発見を繰り返していたら、いつの間にか10年経っていました。

──外部環境の変化には、どのように向き合ってきましたか?

この10年間で紙が減ってデジタルが増えたのは間違いありません。そんな外部要因の変化に伴って、広告が多様化しているし、アートディレクターの役割も少しずつ変わってきています。特にブランディングの重要性の再認識を感じます。どう人の記憶に残るか、どういうブランドイメージを持ってほしいか。商品を売るだけではなく、そこを作ることが広告においての根幹であり、そしてその設計こそ、アートディレクターが一番力を発揮できるところだと思っています。

仕事によっては、すでに決まった方針のもと、デザインは最終的なアウトプットだけを担う形になることも多かった。でも、アートディレクターは「絵をつくるだけの人」でも、「おしゃれに整えてくれる人」でもなく、本来は"そもそも"の意義から考えて作るコンセプトメーカーであるべきだし、それができる …

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この記事が含まれる特集

「ポスト2020」のアートディレクション

2000年代前半、広告界では佐藤可士和さんを筆頭にアートディレクターの仕事が広く世の中から注目されるようになりました。新聞広告やポスターを作ることのみならず、OOHでのダイナミックな展開やグッズ・商品開発、さらにはブランドや企業のCIなどまでを手がけ、アートディレクションの可能性とアートディレクターの関わる領域が大きく広がっていきました。

さて、そこから20年近くを経た現在、広告のメディアは大きく変わっています。ポスターからサイネージへ、そしてWeb、さらにはスマートフォンで見るSNSでの広告や動画、プロダクトなど、アートディレクションの表現領域がさらなる広がりを見せています。向き合わなくてはいけない領域やメディアが増える中で、今アートディレクターたちはどんな考えで、自身のアートディレクションを確立しようとしているのか。本特集では、30~40代のアートディレクター9人に、今、そしてこれからの「アートディレクション」について聞きました。