クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に生かしているのか。今回は、設立10周年を迎えたマームとジプシーの女優 青柳いづみさんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。

『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』
川上未映子(著)
(青土社)
詩とは人間である誰かに向けて書かれるのではなく、かみさまに向けて書かれた言葉である。その言葉は、かみさまには届かない。かみさまがいるかどうかなんて、ほんとうには誰にも分からないことだから。わたしが信じている演劇も、かみさまに向けての行為である。かみさまはみえない。みえないけれど、わたしの目のまえにはいま、あなたがみえている。わたしはあなたに向けて話しかける。
「今日からは、君らのことがよく見える。すべてのものが流れていて、君らがとても親密な間柄だっていうことも、今日からはとてもよく見える」いま目のまえにいるあなた、いたかもしれないあなた、かつてここにいたあなた、まだみぬもの、これからみるものに向かって発し続けられる言葉たち。
わたしにはみえる。まだ言葉で発見されていない"なにか"を、彼女は言葉を通して、わたしは演劇を通して、探している。この世界の「ほんとう」を知りたい …