クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に生かしているのか。第60回目はスタイリストの伊賀大介さんが登場。自身の仕事や人生に影響を受けた本について聞いた。
『18』
大竹伸郎(著)(青山出版社)

多少の忙しさにかまけていると、『既にそこにあるもの』などの著書で画家・大竹伸朗さんがいつも言っている「別に頼まれてもいないのに、どんどん作る。例え性格とか人格が最悪でも、そういうヤツの作品は信用できる」という言葉(フレーズ)が心のずっと奥の方(©the blue hearts)からやって来て、発破をかけられる。
この『18』という本は、大竹さんが18歳のとき、北海道のド田舎(人間よりも牛の数が多い!)、別海の牧場で働いていた頃のドローイングやスナップ写真がまとめられた一冊。まだ何者でもなかった、若き日の大竹さんが「オレは、この先もずっと絵を描きたいのか?」を確認するために「ART」と真逆の「牛の糞出し」をやりに"鞄ひとつで北へ向かう"という武者修行感にグッと来る。
このズッシリと重い本を抱えていると、初期衝動というか青いテンションの風がどこからか吹いてくるのだ。2006年、東京都現代美術館で開催された「全景」展を観て、すぐにこの別海・ウルリー牧場に行き、地平線まで続くひたすら真っ直ぐの道路を見たら、18歳の大竹さんと当時54歳の大竹さんがビシッと一直線につながっていることがわかった。いつも手元にあります。