
富士通株式会社
デザインセンター経営デザイン部
加藤 正義
トップクリエイターから事例の背景にある考え方を学びアップデートする
京都大学卒業後、松下電工(現パナソニック)に入社。研究・商品開発や全社戦略投資案件の意思決定分析担当などを経て、米国のデザインコンサルティング会社Zibaに参画。世界初USBフラッシュメモリーのコンセプトをはじめとする数々のイノベーションをリード。その後、パナソニック電工(株)新事業企画部長、パナソニック電工米国研究所(株)上席副社長、米国のベンチャー企業のCOOなどを歴任。 2009年ZibaにDirector of Strategyとしてリジョイン。2013年、米国ポートランドにビジネスデザインファーム monogotoを設立。ドイツRedDotデザイン賞審査員。慶応大学SDM特別招聘教授。米国ロサンゼルス在住。
濱口秀司さんは、世界初USBフラッシュメモリーのコンセプトをはじめとする数々のイノベーションをリードするビジネスデザイナー。濱口さんの独自のイノベーション発想は、人々の先入観への着目から始まる。
濱口さんのアイデア発想は、人々の思考パターンに着目することから始まる。「特に専門家やユーザーがとらわれる確率の高いバイアス(先入観)を見きわめ、壊すことがアイデアの根源となります」と言う。
99年、USBメモリを着想したときに壊したバイアスは3つあった。「1つめはカスタマー視点のバイアス。インターネットが注目され、大きなデータを保存する『器』は形を失い、ネットがその役を担うと予見されていました。クライアントもZibaのスタッフも、皆このバイアスにとらわれていた。だから僕は、形ある『器』でデータをやり取りする、”触れるエクスペリエンス”に目を向けたんです」。
2つめは技術的バイアス。当時、フラッシュメモリの専門家は、USBメモリを差した瞬間に起動するドライバインストール画面をなくすのは無理だと主張していた。それでは新しいPCにUSBメモリを差し込む度、ユーザー体験を著しく損ねることになる。「実際は98年に発表されたUSBマスストレージクラスという、補助記憶装置をPCに認識させる仕様を用いれば、ドライバなしで使えることがわかりました。端から無理だと決めつけてしまうと、別解を思いつくのは難しいということです」。
3つめは、ビジネス面でのバイアス。画期的な製品である以上、クライアントが自社ブランドで売ろうと考えるのも不思議はない。しかし濱口さんは、DellやIBMといったパソコンメーカーに売ってもらうことを提案する。ユーザーに新しい価値と行為を説明することはコストを高め、市場普及のボトルネックになると考えたからだ。結果、パソコンの背面にあったUSBポートが手元近くに配置され、主流だったフロッピーディスクドライブが消えるのに時間はかからなかった。初めは全員が反対したUSBメモリのコンセプトだったが、いまではコンビニでも売っているくらいだ。
このことからわかるポイントは3つある。(1)既に存在していた、チームやクライント、専門家が必死になって考えたアイデアや方法を土台にしたこと。(2)着目するのはアイデアではなく、そのアイデアを考えた過程を解析し、隠れたバイアスを見つけ、それを壊したこと。ゼロから考えず、バイアスを踏み台に高くジャンプしたのだ。そして、(3)賛同されずとも根気強く説得やプレゼンテーションしたこと。「バイアスを壊すと反論を招いたり、不安をかきたてます。イノベーションとはそういうものです。でも、いったん理解すると皆、夢中になる。あきらめてはいけません」。
バイアスを見つけ、アイデアをハンドリングするために、濱口さんはものごとの構造を示す略図「ダイアグラム」を用いる。ここで言うハンドリングとは、アイデアの構造を明確にし、反転させたり拡張したり、本質を追求したりすることだ。
ダイアグラムに着目したのは、松下電工で、戦略投資案件の分析を担当していたときのことだった。重要な戦略投資案件の不確実性・リスクや戦略を分析し、役員の意思決定の支援をする仕事。自分でユニークな戦略を作り出すチャンスも手に入れた。ただ、「その戦略がイノベーティブであればあるほど、分析は難しく、意思決定しづらい」という課題に突き当たった。
イノベーティブなアイデアは、既存のパラダイムに収まらないため、分析できる要素が減り、不確実性が高まる。つまり数字や数式で読めなくなる。「逆に言えば、数字や数式でないもので考えや問題をハンドリングすれば、イノベーティブな戦略を扱えるようになる、そう考えたんです」。
新しい思考メディアを検討した結果、「シンプルで」「ビジュアルで」「ロジカルな」ツールとして、ダイアグラムに行き着いた。アイデアの構造をビジュアル化すれば、バイアスが隠すスイートスポットを見つけられる。他人にも説明しやすい。以来ノートとペンがアイデアづくりの道具。何かを考えるときは、その構造をなるべくシンプルな図に置き換え、ペンを走らせる。
思考が阻まれるのは、「バイアスを外し難い」「バイアスを理解できない」「バイアスを認識できない」とき。それぞれ「知り過ぎている」「実感がない」「興味がない」という原因がある。凡庸なアイデアしか沸かないのなら、上記のどれかに当てはまるかもしれない。そのため、バイアスを受けないよう、思考の初期段階では極力情報に触れないようにするという。クライアントから膨大な情報を受け取っても、昔はシュレッダー、今はデリートキーを一押しだ。
本講座では、世界的なイノベーターとして数々の成功を収めてきた濱口秀司氏を迎え、イノベーションを生み出すための本質的な思考法やアプローチを学びます。イノベーションを理解し、生み出すために「イノベーションの5W1H(Who, What, When, Where, Why, How)」の切り口で体系化。濱口秀司氏が実際に手がけた「25のイノベーション事例」を分解しながら、革新的なアイデアを生むためのフレームワークを学びます。新規事業開発や問題解決に役立つ実践的なカリキュラムです。
“イノベーションを生み出すための事前準備 自分の思考パターンを知る”
イノベーションを学ぶ前に、まず自身がどのような思考パターンであるのかを知ることが重要、というメッセージから始める本講座。講師が普段から「イノベーションとは何か」を考える、もしくは伝えるに際し、整理している思考パターンの体系をもとにそれぞれの思考パターンを解説します。まずは自身のタイプを把握し、イノベーションを学ぶ事前準備を整えます。
“濱口秀司が手がけた、25のイノベーション事例 構造分解から学ぶイノベーションアプローチ”
イノベーションを「SHIFT」という概念で整理しながら、講師が実際に手がけた25のイノベーション事例を解剖。各事例それぞれで、どのようなアプローチでイノベーションを起こしていったのか。市場、競合、顧客などの背景を踏まえてどのようにSHIFTを実行したのか、具体的なアプローチを解説します。様々な業種業態で、有形のプロダクトから無形のビジネスモデルまで、領域を越境してイノベーションを手がけることができている普遍的なイノベーションの構造について紐解きます。
“イノベーションの生み出し方を5W1Hで体系化 濱口秀司氏の超実践的イノベーションメソッドを解説”
鳥嶋和彦氏が編集者として行った功績は、常に時代の先を見据え、作品に新たな価値を付加し続けたことです。編集者の枠にとどまらず、企画者としての独自の視点を確立し、従来の漫画の枠を超えたエンターテインメントの可能性を追求しました。この段階では、自分の手で未来を創りあげる独自性を追求し、時代を超えるクリエイティブな企画を実際に形にする手法を学びます。
時間 | 講義内容 |
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約2時間50分 | 1.はじめに |
トップクリエイターから事例の背景にある考え方を学びアップデートする
デザインを意匠的にではなく、「どのように売るか」という事業にコミットする視点で捉えられた
高いレベルのクリエイティブを制作して、かつ経営の視座を持って活躍されている
コンセプトの組み立て方やそのプロセスの重要性について、意識が一層高まった
「ことばは、線(一次元)である」「ちから×回数×時間」など、一倉流コピー術が極めてロジカルかつ平易に解説されている
繰り返し触れられる「つくり方をつくる」という考え方は、広告に限らずありとあらゆるモノづくりに通じる哲学だと思います。
私たちが消費者と健全なコミュニケーションをとっていくための、普遍的で根源的な仕組みを掘り出していきます。
「日本とアメリカではこんなに『デザイン』に対する概念が違うのか⁉」という驚きをもってこの講義を見ていました。
不確実性の高まった社会環境の中で、生活者の心は揺れ動き、マーケティング・コミュニケーション活動の難しさが増しています。生活者のブランドに対する期待も変わりつつあると言われる中、いま日本を代表する企業でマーケティング、クリエイティブを担うキーパーソンから「生き残るブランドの条件」を徹底して攻略するための6つのポイントを身に着ける特別講座を開講します。
開講日 | ⚪︎ Webでのお申込み後すぐに視聴を開始できます。(視聴期間14日間) |
注意事項 | 【受講上の禁止事項】 |
受講価格 | 【1名受講】 |