今年4月に開局1周年を迎えた「TRAIN TV」は、多彩なジャンルの番組を展開することで、従来の広告枠を越えた新たなマーケティングプラットフォームとして注目を集めている。この1年でどのような成果が得られ、次なる商品企画の方向性はどこにあるのか。ジェイアール東日本企画に話を聞いた。
昨対で売上が120%に増加 100社の新規・休眠広告主が出稿
ジェイアール東日本企画が「電車の中のテレビ局」として2024年4月1日にスタートさせた番組配信プラットフォーム「TRAIN TV(トレインティーヴィー)」が、開局1周年を迎えた。開局1カ月後の調査では、山手線を週1日以上利用する人の49.0%が「TRAIN TV」の放映を認知し、その約3分の2にあたる64.9%が「以前よりも車内モニターを見るようになった」と回答。短期間での高い認知度と視聴習慣の定着に成功し、広告主からも注目を集めてきた。
首都圏のJR主要10路線とゆりかもめの車両サイネージ約5.7万面を活用し、1週間で延べ8400万人以上の利用者へ本格的な番組コンテンツを配信する同サービス。電車内で単に広告が流れるだけだった従来の公共空間に新たな価値を創出している。“TV”と謡うだけに多彩なジャンルの放映番組が魅力で、バラエティや動物番組などのコンテンツが好評だ。これにより、モニター視認率は開局前に比べて約1割増加し、さらには出稿企業の広告認知率も向上。Google検索では車両サイネージに関連するキーワード検索数がサービス開始前の6倍、X上での言及数も10倍に増加するなど、認知拡大の成果が明確に表れているという。
TRAIN TVブランドマネージャーの中里栄悠氏は「地上波テレビをベンチマークに多様なジャンルの番組を放映するようになったことで、これまで出稿が控えめだった業種からの申し込みが増加。広告売上は前年同期比で120%を超え、飲料、食品、化粧品などの業界からの出稿が顕著です。約100社の新規・休眠広告主が加わりました」と話す。
また認知が進んだことで芸能事務所やコンテンツ事業者からの問い合わせも増えた。「一緒に新しいコンテンツをつくりたい」といった声が寄せられ、従来の枠を越えたメディアとしての存在感が高まっている。
開局から1年。広告主からは「TRAIN TV」が単なる広告出稿媒体ではなく、番組自体が高い価値を持つメディアとして認識され始めているようだ。中里氏は「他のメディアのように番組コンテンツの文脈を活かして広告を出稿することで、より効果的なコミュニケーションが実現できるというお声も寄せられています」と話す。
そんな「TRAIN TV」では現在、番組自体をプラットフォームとして活用する4種類の広告メニューを展開する。「番組協賛」では、番組を通してスポンサーのブランドイメージを訴求し、「番組直後枠」では番組放映直後のタイミングに広告を流すことで、視聴者が番組の余韻を感じるなかでの訴求が可能だ。また「番組内PR」では、番組コンテンツの一部として自然な形でブランドや商品のメッセージを伝え、「番組特別回」では通常の番組とは一線を画す特別企画を実施し、強いインパクトと話題性を狙う。
TRAIN TV事業部の中村真氏は「これらの手法により、番組内容や放映タイミング、番組放映前後の情報拡散など、複数の要素を統合した提案が可能になります。その結果、クライアントのブランドメッセージをより効果的に届けることができます」と話す。
さらに今年の4月からは「番組協賛」型として、初のスポンサード番組『シェフの顔 Supported by ヱビスビール』がスタート。新進気鋭のシェフに密着し、彼らのこだわりや想い、料理の美味しさを上質なタッチで描くグルメ・ドキュメンタリー番組だ。

特別回+番組直後CM/キッコーマンソイフーズ

料理番組「今日から定番。Go-Toレシピ」の特別回として協賛し、番組直後の枠でCMを放映した。
クライアントコンテンツ/サンリオ「はなまるおばけ」

オリジナル番組の放映と駅メディアの活用で立体的なプロモーションを実施。©’25 SANRIO 著作サンリオ
スポンサード番組/「シェフの顔」Supported by ヱビスビール

サッポロビール ヱビスブランド協賛によるスポンサード番組。番組は車内のまど上3面もダイナミックに活用して、スポンサー企業のブランド価値向上に寄与することが期待されている。
SNSとの連携で話題が拡散 若年層へのリーチ力に期待
SNSを中心としたオーディエンスとのつながりも「TRAIN TV」の強みだ。以前放映されたグルメ番組では、出演者情報を段階的にSNSで公開することで期待感を醸成。放映後には「TRAIN TVで紹介された〇〇に行ってきた」「番組を見るためにわざわざ電車に乗った」といった声が多数寄せられ、実際に番組で紹介された店舗の指名検索数は、放映月には平均して2倍から3倍に増加した。
TRAIN TV事業部の武田陸氏は「視聴前の情報取得から視聴後の行動喚起まで、一連の流れが生まれていることは大きな成果です」と評価。「視聴前後のジャーニーが確実に形成されているので、SNS施策やWebコンテンツの拡充を通じて、視聴者の行動とさらに連動させていきたい」と語る。「TRAIN TV」のオーディエンスは30代以下の若年層が多く、テレビの視聴者が高齢化している現状において貴重な特性を持つ。テレビとのメディアミックスやデジタルメディアとの連携で、より大きな効果が期待できそうだ。
4月には広告メニューや各種データを掲載した広告主向けWebサイトも公開。武田氏は「移動中の電車というユニークな接触ポイントを最大限に活用し、企業の認知向上やブランドコミュニケーションを支援していきたい」と述べる。
中村氏は「今後は広告主と共に制作するコラボレーション番組を増やし、多様化するニーズに柔軟に対応していく。『TRAIN TV』はまだ始まったばかり。意見や要望をお寄せいただけたら」と話す。中里氏は「若者のテレビ離れが進むなか、電車という生活動線上でコミュニケーションできるのが『TRAIN TV』の強み。いま、車両サイネージのメディアパワーは向上しています。現行のメディアプランに“+TRAIN TV”をご検討ください」と呼びかけた。

ジェイアール東日本企画
コミュニケーション・プランニング局 次長
兼 TRAIN TVブランドマネージャー
中里栄悠氏

交通媒体局
TRAIN TV事業部
中村 真氏

交通媒体局
TRAIN TV事業部
武田 陸氏

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株式会社ジェイアール東日本企画 交通媒体局 TRAIN TV事業部