モモコグミカンパニーさんに聞く 「言葉」と向き合うために大切なこと

公開日:2025年3月27日

1月下旬に行われた宣伝会議賞中高生部門の最終審査会。イメージキャラクターのモモコグミカンパニーさんを特別審査員として迎え、グランプリ各賞が決定した。コピーライターの世界に憧れを持っていたというモモコグミカンパニーさん。審査員長の阿部広太郎さんと共に審査会を振り返りながら、言葉への想いについて聞いた。

アイドルとキャッチコピーは親和性がとても高い

―審査会を振り返った感想をお聞かせください。受賞作含み、ファイナリストまで残った作品をご覧になっていかがでしょうか。

モモコグミカンパニー(以下モモコ):すごく楽しかったです!私は学生のときからコピーライターの世界に興味があり、今回、言葉のプロの皆さんとお話することができて大変勉強になりました。

「アイドル」というのはそもそもキャッチコピーとの親和性がとても高く、皆さん独自のキャッチコピーを持っていますよね。私の当時のキャッチコピーは「BiSHのあまのじゃく担当」。自己紹介のコールアンドレスポンスも「就職するならー?(モモコグミー!)」と、“モモコグミカンパニー”という名前にちなんだフレーズで、これらはグループに加入したときに自分で考えました。CDのプロモーションでコピーを書かせていただいたこともありましたが、今回の審査を通して改めて、コピーライティングの面白さを感じました。

阿部:コピーライターの仕事をしていても、このように集まって意見を交換する機会は珍しいです。話し合っていく中で、ひとつのコピーに対する見え方や考え方が変わっていくこともあって面白いですよね。

モモコ:批判的な意見もあったり、コピーライティングの原点に立ち返ったり。審査員の皆さんの視点がそれぞれ違うのが印象的でした。「これは違うんじゃないか」という議論を呼びながらも最終的に受賞した作品もあって。万人受けだけを狙えばいいわけじゃない、誰かがドキっとする言葉が強いのかなとも感じました。

―「宣伝会議賞」に授業で取り組んで、たまたまコピーライティングの世界に出会う生徒さんも多くいます。モモコさんご自身は中高生時代、「書くこと」「表現すること」に対してどんな思いがありましたか。

モモコ:それまであまり誰かに注目されることのなかった私が、初めて学年新聞に載ったのが小学校高学年の時に書いた読書感想文でした。それから当時NHK総合で放送されていた『着信御礼!ケータイ大喜利』にも何度か応募して採用されたり。認めてもらえた喜びが、原体験としてあると思います。

一番うれしかったのが、BiSHに入って自分が作詞した曲で、ライブ会場でファンの皆さんが身体を揺らしているのを観た時です。自分の言葉が音楽に乗って、感情を伝えられた。目の前で、自分とは全く違う人生を歩んでいるだろう人たちが涙を流していたのが衝撃的で。そういう体験をしてから、さらにエッセイを書いたり小説を書いたりと、言葉にのめりこんでいきましたね。

阿部:それぞれ違う生き方をしてきた人たちがつながれる瞬間をつくるというのは、コピーしかり、歌詞しかり、言葉には力があると感じますよね。

あらゆる事象から学べるのが言葉のおもしろいところ

―モモコさんは審査会の最後に、「もっといろんな人に応募してほしい」と仰っていました。

モモコ:私自身、授業で書くような作文はすごく苦手でした。先入観で「言葉って難しい」とか「自分には無理」と思っているような人たちの心を動かせたらいいですよね。「宣伝会議賞」の受賞を目指すアニメとかもおもしろいかもしれません(笑)。

阿部:キャッチコピーは一行の読書感想文という捉え方もできると思います。担当する商品とかサービスに対して、自分の中でどう思うかを突き詰めてひと言にする。そうやって10代のうちから自分の内面に向き合って言葉を紡ぐきっかけとして、「宣伝会議賞」が広まっていったら嬉しいですね。

モモコ:学校の成績がいい=語彙力があってコピーもうまい、というわけでもないですよね。逆に型にはまっていない表現が出てくる可能性もあると思うんです。

阿部:まさにです。コピーライティングは言葉で人と人の心をどうつなげていくかを考える仕事なので、大切なのは相手のことをどこまで想像できるかなんですよね。

モモコ:想像力は大切だと思います!それはいわゆる「コミュニケーション能力」というのにも近いのかなと思っていて。相手に質問できるかとか、興味を持てるかとか。いろんな経験をしてみたり、人の話をよく聞いたり。そういう、人とのコミュニケーションを積極的に行うことが、コピーライティングの力を上げることにもつながるのかもしれません。

阿部:今回モモコさんが特別審査員賞として選んだ「こら。もっとしっとりしろ、私。」(課題:マルホ)は自分自身に語り掛けるような口調で、他のコピーと少し毛色が違いました。そうした表現は映画や小説などから学べる部分も多いですよね。そうやって身の回りにあるいろいろな事象から学べるのも、言葉のおもしろさかもしれません。

―最後に、中高生の皆さんにメッセージをお願いします。

モモコ:今回頑張ったのに賞に選ばれなかった人もたくさんいると思うんです。私もBiSH時代、作詞はメンバー内のコンペで選ばれたりしていたんですが、悔しい思いをたくさんしました。でも例えばアルバムづくりで3曲提出してほしいと言われたら、10曲全部に歌詞を書いてみたり。めげずにまた、挑戦してほしいなと思います。

阿部:言葉について向き合うことは、これから一生続いていくことでもあります。この先も、言葉から自分の周りを、そして世界を良くしていくということを、皆さんと一緒に実現していけたらと思っています。言葉について考えて、そして書き続けましょう。

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