生成AIの台頭により、業務の効率化が実現するとともに、メディアの在り方や、企業と人の接点の作り方をも変えるような大きなインパクトが予測されます。マーケターは、これらの技術をどのように受け入れ、業務に活かしていけばいいのでしょうか。21回目となる今回は、音楽生成AIについて、富士通の山根宏彰氏が解説します。
日常生活にも浸透するBtoC向けAI技術
生成AI(人工知能)は一般消費者の生活に深く溶け込み、BtoC分野でもさまざまなサービスが登場している。今回は、その中でも特に音声関連の音楽生成AIに着目し、消費者の日常での利用事例を紹介しながら、マーケティング観点での購買行動・ブランド認知への具体的影響を紹介、解説する。
音楽生成AIを活用すれば、誰もが音楽クリエイターに
近年、登場した音楽生成AIは、テキストやメロディの入力から楽曲を自動生成し、一般消費者でも手軽に音楽制作ができるようにしている。AIが音楽分野にエポックメイキングな影響を与えた事例についてだが、LSTM(長短期記憶)を用いた音楽生成の代表的な例として、ケンブリッジ大学のLiangらが開発したBachBott(2017 ISMIR)が挙げられる。
BachBotは深層LSTMを用いることでバッハのコラール(四声コーラス)のスタイルで楽曲を自動作曲するモデルである。このBachBotが生み出す楽曲はバッハの作風に非常に近く、人間による大規模な聴取テストでは、聴衆がBachBotのつくった曲とバッハ自身の曲を聞き分ける正答率がランダム推測と比べてわずか1%...