ゴールド・眞木準賞受賞の3名が語る「誰かと一緒にコピーを書く」ということ

公開日:2024年4月25日

贈賞式から約1カ月後、コピーゴールド、ビデオ&オーディオゴールド、そして眞木準賞を受賞した3名で座談会を実施。「宣伝会議賞」への向き合い方や今後の目標について、話を聞いた。

オプト
樫藤直也さん

×

フリーランス
小島功至さん

×

大広
野口 温さん

受賞作品は「宣伝会議賞」特設サイトをご覧ください。

“この熱量を次の世代につなげていく
役割になれたらと思っています。”

仲間ができてから多くのコピーを書けるように

―自己紹介をお願いします。

小島:熊本県を中心にフリーランスの企業顧問として、デザインやコピーライティングを通じた経営者の伴走支援や新事業や商品開発などを担当しています。初めはデザイナーだったのですが、より多くの課題を解決するためにコピーライティングを学び始めたことがきっかけで「宣伝会議賞」の存在を知りました。

樫藤:デジタルホールディングスのグループ会社であるオプトにて、Web広告の制作に携わっています。オプトに入社後、ダイレクトクリエイティブと呼ばれる、お客さまからのご注文やダウンロードなどのレスポンスを目的とする広告を制作する部署に3年間ほど在籍し、日々多くのバナーやランディングページを制作していました。昨年からはデジタルプロモーション全般を扱う部署で、商品やサービスの認知向上やファンづくりを目指した広告を制作しています。

野口:受賞時は大学生でしたが、4月から広告会社の大広に入社しました。今は、会社で使用するPCの設定をしているところです(笑)。

―改めて、受賞への想いをお聞かせください。

小島:「宣伝会議賞」はさまざまなコピーやコンテのアイデアを試せる場所。贈賞式で名前を呼ばれた瞬間はもちろん嬉しかったのですが、今は「来年からはもうチャレンジできない」という寂しさのほうが勝っています。

樫藤:8年ほど応募していない時期はありましたが、初めての応募は15年前です。ずっと二次通過止まりでしたが、今回初めてファイナリストに選ばれました。贈賞式は記念だと思いながら参加させていただいたのですが、コピーゴールドを受賞できて本当に夢のような感覚でした。

野口:受賞は本当にラッキーだったと思っています。1800本書いて友人に驚かれたのですが、頑張るのは私たち応募者にとっては当たり前のことで。自分より実力があり、自分より頑張った人たちがとてつもない数いる中で、運よく選ばれたと考えています。応募当時は宣伝会議のコピーライター養成講座にも通っていました。最初の講義で3本提出したら評価はすべて最低のC。コピーは苦手なんだと思っているところだったので、実力はまだないと思っています。謙遜ではなく、事実として。ただ、自分の好きな静かなトーンでギャグをいうコピーで受賞できたのがとても嬉しいです。誇らしいです。

小島:皆さんはどのくらいの本数を応募しましたか。

樫藤:初めて応募した時は、数十本の応募数でした。私も当時コピーライター養成講座に通っていたのですが、受講生の皆さんはケタ違いの数を応募していたということに気が付き、翌年は700本くらい応募しました。今回の応募では、実はひとつの区切りと思いながら力を入れていて、応募作品の総数は2115本でした。99%がコピーで、1%がCMです。

小島:私も同じくらいで今年は2120本でした。そのうちコピーが2000本でCMが120本です。最初は10本くらいの応募から年々増えていきました。応募期間の2カ月間は集中するのでコピーを書く体力もつきますし、だんだん切り口の出し方も分かってきて、量が書けるようになっていきました。ただこの2年は応募をお休みしていました。9月から10月は毎年何をやっていてもコピーのことばかり考えていたので、小学生の娘から「秋の思い出がない」と言われてしまって…。家族との時間を大切にしたうえで、今回復帰しました。

野口:初挑戦の去年は140本で、1次通過が1本だけ。今年はその10倍以上だそうという目標を立てていました。今年は1790本です。

―これまで「宣伝会議賞」にはどのように取り組んできましたか。

小島:だんだん書ける量が増えていったという話に繋がるのですが、その理由のひとつが、「宣伝会議賞」を通じて友達ができたからだと思っています。応募当初は周囲に応募している人が少なくてずっとひとりで書いていました。書いた作品の見せあいはもちろん勉強になるのですが、オンラインなどで雑談をしていると皆さんそれぞれの個性的な思考のクセが分かってくるんですよね。そうすると「あの人ならこう書くかも」というように、新しい切り口や表現が見えてくるようになるんです。これは実務でも経営者の方の思考をトレースして事業開発などを行うので近いものがあると感じています。

野口:僕はひとりで取り組んでいたのですごくうらやましいです。応募期間は就職活動も終わって卒論もまだ時間があったので、生活=「宣伝会議賞」でした。彼女と出かけている時にショッピングモールで赤ちゃん本舗の店舗を見つけて、でもひとりで考えたいので「ちょっと二手に分かれて30分後に発見したことを言い合おうよ」とか言って…相手はまったく「宣伝会議賞」のことは知らないので訝しがられました。C.C.レモンもたくさん飲みましたし…。

樫藤:そこまでしっかり課題について深掘りしているのはすごいですよね。

小島:実務では樫藤さんが一番コピーライティングに近いと思いますが、「宣伝会議賞」との違いはありましたか?

樫藤:私自身、実務と「宣伝会議賞」のコピーの書き方にはほとんど違いはないと思っています。違いがあるとすれば、情報を掘り下げる粒度です。実務であればクライアントからオリエンテーションを受けて、ストラテジックプランナーから市場分析の資料をもらいます。それらを踏まえて煮詰めて、まずはコンセプトを導き出します。そして、そのコンセプトに沿った言葉を書き始めます。プロセス自体は「宣伝会議賞」でも同じことをしていますが、「宣伝会議賞」では、最初のオリエンテーションで得られる情報が限られているため、そのような点では難しさはあります。

小島:贈賞式で協賛企業の担当の方とお話していて、そこで初めて「そういうコピーが欲しかったんだ!」と理解できた課題もありました。

―日頃、どのようなインプットを行っているのでしょうか。

小島:仕事ではいろいろな業種の課題解決に携わっているので、新しい情報が毎日入ってきています。関連する書籍を何十冊と読んでその業界の土地勘をつかんだり、時間の余裕があるときには小説を読んでみたり、第一線で活躍する方に会いにいったり。そこに会社のビジョンを掛け合わせて、「世の中」「会社」「商品特性」のちょうど重なり合う部分を見出してアウトプットする、という感じです。

樫藤:学生の頃から意識的に映画を観るようにしています。そうすることで、絵が浮かびやすくなります。仕事のなかでも、協力パートナーと話すときに、映画のワンシーンを思い出して言語化したりします。さまざまな映像を観ることで、私自身の引き出しを増やすこともそうですが、協力パートナーやクライアントとイメージを共有しやすいといったメリットもあります。

野口:僕はX(Twitter)と『コピー年鑑』を見ています。映画や音楽には疎くて漫画ばかり読んできたので、お二人のお話を聞いてもっと映画を観ようと思いました…。

小島:相手と自分が重なる部分があると、想いが伝わりやすくなりますよね。僕は今回「日本で一番有名な小説の書き出し」を調べたら、川端康成の「雪国」だったので、CMコンテのアイデアに用いました。短い文章のなかで情景を伝えるには、そうやって多くの人の中で共通しているイメージを利用することも重要だと思います。

樫藤:時代が変わり、誰もが知っている共通のコンテンツが減ってきていますが、普遍的なものや一度、定着した言い回しはなかなか消えないものだと思います。

野口:いい作品はリバイバルされて伝わっていくこともありますからね。

小島:今回のグランプリの「泣く子と育つ。」もですが、ことわざみたいな誰もが知っている背景があると伝わるスピードが速いですよね。

樫藤:まだ使われていないけれど皆が知っているフォーマットはまだまだあるのだと思います。

―普段、コピーはどのようにつくっているのでしょうか。

小島:最初はアナログで書き出して、良いと思ったものを調整してコピーの形にします。いちどIllustratorに明朝体の縦書きで打ち込んで、出力してから見た目を整えていくんです。

樫藤:3年前まではノートに手書きでしたが、いまは最初からパソコンに打ち込んでいます。

野口:僕もパソコンのメモ帳ですね。

樫藤:小島さんは、手書きをしてからデジタル化されていますが、手書きを残す理由はありますか?

小島:デジタルだとスムーズに書けすぎてしまうんです。手書きの場合は、思考のスピードと書くスピードにズレがあって、書いているうちに違うコピーになっていたり。その変化も面白いのでそうしています。

―今後の展望は。

小島:グランプリの貝渕さんとは第55回の贈賞式で会って、その時から交友が続いています。同じものを目指してきた仲間と話せるのは楽しいので、これからも交友関係は続けていきたいですね。それから今、仕事の一環でオルタナティブスクールに携わっています。今回の中高生部門グランプリの山本さんの話を中学生にしたら、「俺もやってみたい!」と言ってくれて。この熱量を、次の世代につなげていく役割になれたらと思っています。

樫藤:これからも、実務でしっかりコピーライティングに取り組んでいきたいです。お客さまに、このコピーなら、広告なら反応したい、ハッシュタグをつけて投稿したいと感じていただけるような、世の中に波及していくデジタル広告をつくっていきたいと思っています。

野口:僕はコピーライターになって、コピーライティングを勉強したいです!それからこの半年「宣伝会議賞」や「メトロアドクリエイティブアワード」などいろいろな公募で受賞することができたのですが、まだチームでの受賞はありません。今は「販促コンペ」にチームで取り組み始めているので、ひとりでは出ないアイデアの形を見てみたいと思っています。

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