Paidメディアとして、また顧客からの評判を得るEarnedメディアとして、さらに自社で運営するOwnedメディア的な役割としても重宝されるSNS。これらトリプルメディアにSharedが追加され、新たに提唱されているのが“PESOモデル”だ。SNSに特化した役割を持つフレームが生まれた今、メディア戦略においてSNSが担う役割とは?電通メディアイノベーションラボの主任研究員で、『シェアしたがる心理』(宣伝会議刊)の著者である天野彬氏が解説した。
PROFILE

電通
電通メディアイノベーションラボ
主任研究員
天野 彬氏
1986年生まれ、東京都出身。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了(M.A.)。若年層のメディア・消費行動やSNSの動向に関するリサーチ/執筆/コンサルティングを専門分野とする。主著に『シェアしたがる心理―SNSの情報環境を読み解く7つの視点―』(宣伝会議、2017)や『SNS変遷史』(イースト新書、2019年)など。共著に『情報メディア白書』(ダイヤモンド社、2016-2020年)。セミナー登壇やニュース番組出演などの経験も多数。
SNSマーケティング論の見取り図 「シェア」に着目してきた過去
本稿は、SNSマーケティング概論と銘打っています。本来であれば1冊の書籍になるほどに重厚なテーマですが、ここではマーケティングの4Pにおける広告・販促(Promotion)にフォーカスした内容になることをご了承ください。
SNSマーケティングをめぐってさまざまに提起されてきたフレームワークを整理しつつトリプルメディア(PESO)の視点から、その現在地を確認してみましょう。
SNSの技術的新規性ゆえに、この10年ほどはSNSを活用したマーケティング論の黄金期でした。この新しい現象を捉えるために、さまざまなフレームワークが提案されてきました。
態度変容モデルを見ても従来は、長くAIDMAモデルが使われてきましたが、2006年にはAISAS、その後も、SIPS、ULSSASなど、さまざまなモデルが提案されてきました。ただ、いずれのモデルにおいても、ポイントとなるのは「S」、つまりはユーザーの「シェア」をどう生かすのかに着目していることがわかります。生活者のUGC※1を促進し、ブランド主導ではない形でブランド構築をしていこうという考え方といえます。
※1:User Generated Contents
早稲田大学商学学術院の恩藏直人氏が著書『R3コミュニケーション』(2011年)で示したのも、①ブランドは生活者にRelevance(関連)な情報を届け、②ブランドとファンはRelationship(関係)を築き、③そのファンが他の生活者に情報を拡散することでReputation(評価)が高まるという...