ルノーの実験的CM──複合現実が生むエモーション

公開日:2019年6月18日

ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。

バーチャルキャラクターを起用仮想から現実へ逃避しよう

ルノーがフランスで新型SUV「カジャー」の実験的な販促ムービーを展開しています。CGで制作された「LIV」という名前のバーチャルキャラクターをアンバサダーに任命し、彼女に現実の新型「カジャー」を運転させ、その魅力(力強さと乗り心地)を伝えようとする試みです。

このムービーのタイトルは「現実へ逃避しよう(Escape to real)」。映像では、まず「カジャー」の目の前にLIVがスタートレックのテレポートのようにノイズを帯びながら現れ、彼女がバーチャルであることが示されます。

場面が切り替わり、ノイズの解消されたLIVが運転席に現れ(カジャーの運転席=良好な状態という意味づけが行われ)、市街地を出発します。峠道を軽快に進み、カーナビのメニューから「現実へ逃避」を選択。すると次第に道は険しくなり、クライマックスではオフロードを力強く駆け抜け、景色を一望できる地点に到着します。

その過程で映し出されるLIVの表情は生々しく、世界が追求する先端テクノロジー(VRやAIなど)の象徴であるLIVの逃避先が「リアルな現実」であるというパラドックス・撞着効果も相まって、妙に運転のリアリティを感じさせられるのです …

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