海外で話題になり、見られている動画広告のアイデア、切り口にはどのようなものがあるのか。先進的な企業の動画活用事例とその考え方を電通 土屋泰洋氏に解説してもらった。
ネコと勝負しなくてはいけない時代
2013 年、カンヌライオンズのとあるセミナーでDroga5のDavid Droga氏がこんな発言をしていました。「我々はいまやネコ動画をYouTubeにアップしているヤツらと勝負せざるをえなくなっている(You're competing with some guy whois putting a cat down his pantson YouTube.)」。
今や検索フォームに欲しいものを入力すれば大体のものは手に入る時代。企業が一方的に自慢するだけの映像は、いくらお金をかけて素晴らしいクオリティの映像でも、ネコのかわいい仕草の映像にやすやすと抜かれてしまう。
話題になる動画広告を考えるということ、それはつまりインターネット上でなぜか人気を誇る「ネコ」に勝つ方法を考えることと言えるかもしれません。インターネットにおけるネコとの戦い方には今どのような戦術が有効か、多数の事例を交えながら分析してみたいと思います。
戦術1:あるあるを逆手に取る
YouTubeなどの動画サイトのトレンドを追っていると、定期的に話題になる動画のフォーマットがあります。例えば「Photo a day」と呼ばれるタイムラプス自分撮り。毎日1枚ずつ自分の写真を5年間撮影したタイムラプス映像は見たことがある方も多いのではないでしょうか。
こうしたYouTubeの話題のビデオで散見される手法を借用することで、意外性を演出し、力強いメッセージを伝えるという手法が多く見られます。例えばSaatchi & Saatchi Belgradeがセルビアにおける家庭内暴力問題に注目を集めるために制作した「One Photo a Day in the Worst Year of My Life」(1)という動画。最初はよくあるタイムラプス自分撮りビデオのように見えますが、映像を見続けるとショッキングな展開が…。
これに構造的に非常に似た作品としては、カンヌのサイバー部門でゴールドも獲得したSave the Childrenの「Most Shocking Second a Day Video」(2)が挙げられます。これはPhoto a dayの派生として昨今よく見かける、毎日1秒ずつ映像を撮影してつなぐ「Second a day」と呼ばれるフォーマットを借用したもので、シリア紛争によって平和な日常を送る一人の女の子の生活が悲劇に変わっていく様子を描いています。Second a dayという日常的によく見るフォーマットを使うことで生々しいリアリティを演出することに成功しています。
上記の2つの事例は「一般ユーザによって投稿された話題になるビデオあるある」に注目したものですが、逆にプロモーション映像でよく見られる演出、いわば「広告あるある」に注目して話題化に成功した映像もあります。「Buy My Barina」(3)は15年乗り続けた愛車の売り手を見つけるために個人によって制作された映像で、車はボロボロなのに、まるで高級車のCMのような演出を施すことでそのギャップが話題になりました。
戦術2:エクストリーム・プレゼンテーション

スケートビデオから、宇宙からの自由落下に至るまで、普通の人はとてもできないような危険で、過激なビデオは常に一定の人気があるコンテンツの一つです。そういえば、今年のカンヌでも多数受賞したVOLVO TRUCKSの「Live Test」(4)シリーズも、猛スピードで走る2台のトラックの間を綱渡りで渡ったり、社長自らスタントに挑戦したり、ヴァンダムが2台のトラックで股割りを披露するなど、VOLVOのトラックの性能をエクストリームにプレゼンテーションするものでした。
同じく車の事例だと ...