米広告会社Deutschのロサンゼルス支社には、社員の副業を奨励し、会社を挙げて支援する制度がある。社員が持つ潜在能力を発揮させるための取り組みだ。
CMやPRでもバックアップ

Deutsch LAの社内制度「サイドプロジェクト・プロジェクト」の支援を受け、ビジネス化した「The bouq.com」。テレビCMの制作にも社内のリソースを割いている。写真下はECサイト。
「この会社では、自分のやりたい仕事ができない」――そんなふうに会社を飛び出したくなるのは、広告業界の人間ならば珍しくないだろう。「この業界で働く人は皆、クリエイティブだ。この事実にもっと目を向けよう。私たちは、行動主義者で、思索家で、革新者だ。クリエイティビティが高い人ほど、取り組む価値が高いプランに向かいたくなるのは当然」と、Deutsch LAのアカウントディレクター、アンドリュー・ダボワさんは指摘する。
人材流動性の高い米国では、企業にとって、社内の才能の維持は経営資源を守ることにつながる。日本でも、クリエイターの独立や移籍の話題は、よく耳に入ってくることだ。
そこで、Deutsch LAはこんなプロジェクトを2012年に立ち上げた。その名も「サイドプロジェクト・プロジェクト」。「社員が持つ潜在能力を、社内外で最大化させる取り組みです。その目的は、彼らを社内に留めることにあります」と、Deutsch LAのチーフ・オペレーティング・オフィサーのキム・ゲッティさんは明かす。この大胆な制度を、広報担当副社長のジェフ・スウィートさんはこう説明する。「起業家精神を促し、彼らの情熱を称賛するほうが、社にとって良い影響をもたらすはず。私たちは常に複数のプロジェクトを抱えるのが普通ですから、本業への問題もないでしょう」。