南仏で生まれたスキンケアブランド「アベンヌ」を扱うピエール ファーブル ジャポン。約270年もの歴史を持つ"肌にいい"温泉水をベースに化粧水やクリームなどを展開する。世界約100カ国で販売するグローバルブランドの、日本市場における戦略に迫った。

日本市場で展開している「アベンヌ」製品群は、スプレー式化粧水「アベンヌ ウオーター」を中心に約30種類。この秋冬は全身用保湿クリーム「アベンヌ トリクセラプラスエモリエントクリーム」が好調だった。
アベンヌ村の温泉水から生まれた
日本市場において敏感肌のためのスキンケアブランド「アベンヌ」が登場したのは、1986年のこと。1980年にフランスの医薬品メーカーである、ピエール ファーブル社と資生堂の合弁会社「資生堂フランス」を設立したのが始まりだ。1986年には日本法人であるピエール ファーブル ジャポンが誕生、88年から資生堂が持つ販路を通じて「アベンヌ」製品が日本市場でも流通するようになった。
アベンヌといえば、スプレーで肌に直接吹きかける化粧水「アベンヌ ウオーター」がおなじみだが、この形状は当時としては珍しいものだった。現在も敏感肌の人やナチュラル志向の人を中心に、世界約100カ国で愛されている「アベンヌ」。その由来は、約270年前までさかのぼる。
1736年に南仏のラングドック地方にあるアベンヌ村で発見された温泉水がルーツとなっており、1874年には“肌にいい水”として科学的根拠が認められている。そして1975年にピエール ファーブル社がアベンヌ温泉水の源泉を取得したことで、その力が一層広く知られるようになった。日本市場では前述のとおり1986年に発売したが、日本人モニターによる商品テストによって日本人の肌質に合った商品をつくり続けてきた。
「グローバル共通のアイテムやアジア市場向けのアイテムはもちろんのこと、日本市場にあわせ開発されたアイテムを含め、日本では約30種類を販売しています」と説明するのは、ピエール ファーブル ジャポンで「アベンヌ」のプロダクトマネージャーを務めるマーケティング部の樋口昭仁氏だ。
基幹商品からアイテムを拡張
樋口氏は2005年に資生堂入社、営業職を経て08年からピエール ファーブル ジャポンに所属しマーケティング戦略などを手掛けてきた。2013年からプロダクトマネージャーとして、商品開発や営業戦略を含む「アベンヌ」ブランドのマネジメントを担っている。
「現在の課題は、単に肌を改善に導くスキンケアとしての機能だけでなく、南仏の自然由来のチカラ、最先端の科学による裏付け、約270年にわたり積み重ねてきた歴史など、アベンヌが持つ多様な価値をお客さまに伝えていくこと。“敏感な肌の方にもお使いいただける、安心・安全なブランド”というポジショニングはこれからも変わらないが、様々な肌質の方にも広く使っていただけるブランドであることをアピールしていきたい」と樋口氏。
商品展開も基幹商品である「アベンヌ ウオーター」のみならず、ハンドクリームやボディクリーム、ファンデーションなどのベースメイクアイテムへと広がっている。
ブロガー向けイベントも開催
2013年秋から2014年冬にかけては、全身用保湿クリーム「アベンヌ トリクセラプラス エモリエントクリーム」がヒットした。のびが良く、柔らかな使い心地が特徴であることから、1月には子育て中の母親向けにクリームを使った「ベビーマッサージ」の体験会を都内で開催。ブロガーなど14組の親子が参加し、情報サイト「All About」とのタイアップ企画としてWEB上でレポートを掲載するなど、プロモーションにも注力している。
このほか広告展開はWEB広告と女性誌への出稿が中心で、定期的に本国である南仏へのプレスツアーも開催。温泉水が湧き出る人口100人ほどのアベンヌ村や、隣接して建てられた皮膚ケアのための施設「テルマリズムセンター」、商品開発・研究のための施設「ヴィグレ研究所」などを巡り、「アベンヌ」ブランドへの理解を深めてもらう機会を設けてきた。
最近ではFacebookページの運用にも力を入れており、グローバルで82万を超える「いいね!」を集めている。PR担当者と連携しながら週に3回程度投稿し、ユーザーからのコメントにも返信するなど親近感を醸成するコミュニケーションを試みている。
「シンプルな成分でありながら、確かな効果を実感いただけるのがアベンヌの特徴。あらゆるお客さまとの接点を通じて、その期待に応えていきたい」(樋口氏)といい、今後さらに「アベンヌ」ならではの価値を広く伝えていきたいと考えている。

南仏にあるテルマリズムセンター。アベンヌ温泉水を使った皮膚ケアのプログラムを提供している。

アベンヌの商品開発や研究は主に南仏のヴィグレ研究所にて。

エモリエントクリームは生後3カ月以上の乳児の皮膚にも優しい。