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[PR] キーワードは「現実加工」。五輪は都民が主役のイベントになりうるか?

公開日:2013年10月01日

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東京招致決定の瞬間をとらえた、駒沢オリンピック公園のパブリックビューイングの様子。9月7日から8日にかけて、オールナイトで開催された。この盛り上がりも、非日常を味わうための「現実加工」かもしれない。

つまらない日常を非日常に 都民が主役のイベントへ

近年のオリンピックは、放映権料の高騰やグッズ売上の拡大などもあって、かつてないほどに商業主義化が進んでいると言われる。その種のビジネスに関わる人々にとっては、大きな商機を約束されているというより、なんとしても成功させなければならない「宿題」のような面があるかもしれない。だが私は、そこであえて別の角度からオリンピックを考えてみたい。

東京のような大都市には、人口の流動性が高い上に、関わりの希薄さから地域全体への帰属意識を持ちにくいという特徴がある。一方で、国内外の来訪者に「おもてなし」を提供するためには都民の多くの協力は不可欠。オリンピックを「都民が主役のイベント」として意識してもらわなければならないのだ。

では、その意識を高めるための「参加感」はどのようにして醸成されるのか。キーワードは「現実加工」だ。現実加工とは、つまらない日常に、ウソと分かっている演出をあえて紛れ込ませることで、ちょっとした非日常感や感動を得る振る舞いのこと。

ハロウィンで仮装して街を歩くのも、たまたまお店にいた誕生日の人のために、お客さんも一緒にバースデーソングを歌うのも実はどこか気恥ずかしいのだけど、そうした演出に巻き込まれることで、どこかウキウキした気分になるものだ。

ウソだと分かっていても感動したいという割り切り

あるいは、ソーシャルメディアで流布する「感動したらシェア!」系の物語にせよ、LINEなどで交わされる若者たちの「褒めあい」「感覚の共有」を促すコミュニケーションにせよ、彼らは心の底から感動したり褒めたりしているわけではない。だが、ウソだと分かっていても感動してみせた方が、日常が豊かになるのならそれでいい、という割り切りがそこにはあるのではないか。

だとするならば、これから重要になるのは、東京という都市空間に日常を楽しくするような小さな演出を交え、オリンピックというイベントに向けて、あえて「自分たちこそが主役だ!」と考えるように促していく取り組みのはずだ。そうした演出を東京のあちこちで見るようになることで、オリンピックを単なる商業化されたスポーツイベントではなく、市民のためのイベントにしていくことができるのではないか。

鈴木謙介氏

関西学院大学 社会学部 准教授 鈴木謙介氏(すずき・けんすけ)

専門は理論社会学。情報化や消費社会をテーマに現代社会を分析。著書に『カーニヴァル化する社会』『サブカル・ニッポンの新自由主義』ほか多数。近著に『ウェブ社会のゆくえ』がある。