今回のテーマ:「秋の夜長」
日々変わっていく、店頭の売れ筋商品やトレンド。そんな中、店頭を取り巻く環境の機微からヒット予測ができれば、広告プロモーションのアイデアや手法も広がります。トレンドに敏感、かつ裏付けのとれた予測に定評のある商品ジャーナリスト・北村森さんが、3カ月先の店頭をテーマに基づき予報します。
快眠ニーズは夏だけにあらず!秋こそ積極提案を

2011年、寝具市場は前年比100.3%とプラス成長に転じました(矢野経済研究所調べ)。節電を余儀なくされるなか、涼しさを追求するジェルマットや寝心地のいいシーツなどの寝具に注目が集まったことが一因でしょうね。
さらに、ここ1年の動きをみますと、夏の夜を快適にすごせる涼感寝具だけでなく、通年役立ちそうな商品が明らかに増えています。身体に負担のかからないベッドパッドやマットレスが、その代表格です。ここが重要。市場の盛り上がりを夏だけのものにしないために、「秋の夜長こそ快眠を」といった店頭での訴求が肝心です。
寝具はそうそう買い替えるものではない一方、快眠に対する意識は高まっている印象。大手企業も市場開拓に乗り出している今が好機です。
コスパ高まる機器の魅力をいま一度訴求すべし

GfK Japanの調べでは、昨年、薄型テレビの販売台数は前年比60%減という惨憺たる状況でした。とはいえ、50インチ以上の商品は構成比・金額ベースとも増加、さらにサウンドバー(外付けの高音質スピーカー)は前年比1.4倍の売り上げとも。
かつて「ホームシアター」のプチブームがありましたが、現在では、価格と手間の両面で、購入のハードルは極めて低くなったということです。
4Kテレビ、スマートテレビといった新世代商品が一般に普及するのは、もう少し先でしょう。むしろ、すでに価格がこなれている商品で、ここまで楽しめますというアピールが、もっと必要と感じます。ボーナス商戦低調のなか、「秋の夜長のホームシアター」の提案は、現実的な施策でしょう。
夜に楽しむ大人の嗜好品として市場を援護

夏が旬だった炭酸飲料にも注目です。長らく低迷していた炭酸飲料は、2000年代半ば、天然素材を売りにした商品や、ゼロカロリー商品の登場によって、売上を回復。2010年には頭打ちとなりますが、昨年から風向きがまた変わりました。止渇飲料という枠を飛び越え、大人の味覚に耐えられる商品が登場したからです。今年で言えば、サントリーの「トロッタ」が好例。夜の時間、大人にじっくりと味わってもらおう、という狙いです。
寝具にせよ飲料にせよ、従来売れていた季節以外にも照準を定めた商品が増えている、ここがポイントです。店頭スタッフは、その点を十分理解することが求められます。今や、即席の冷し中華だって、メーカーが夏以外にも展開させようと考える時代ですからね。
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北村 森氏(きたむら・もり)商品ジャーナリスト。『日経トレンディ』編集長、同誌発行人を務めたのち独立。ABC/テレビ朝日系「ヒットの泉」など4本のテレビ・ラジオ番組に出演中。最新刊は『途中下車』(河出書房新社)。 |
- 「秋の行楽シーズン」トレンドはこうなるでしょう!